第3話  2

 「起こしたかたか?雪菜」

 やかんが湯気を吹く音だけのなる部屋に扉が開かれる。

 「いえ、アマタちゃんが寝たから少しお話しをと思ったの」

 あの後、二人は今までのが嘘だったかのように静かになり、寝室に行き、ヒソヒソと話しながら同じベットで抱きながら瞳を閉じた。

 何を話していたかまでは聞こえなかったが、仲が良くなりなった事はいい事だろう。

 「何か飲むか?」

 「そうね、アールグレイがいいわ。茅葉くんちは色々なお茶があって面白いわね」

 そう微笑みを見せ、ベランダのドアを開け放ち手すりに身を預ける。

 そう言ってくれれば今まで備えてきた甲斐があるというものだろう。

 「ごめんなさい、今日は少し興奮しすぎたわ。」

 「いつもの事だけど、今日は一段とすごかったな…」

 ティーカップを両手に持ち雪菜の立つベランダに出る。

 心地よい風に、優しく光る数多の星。蝉の泣く声もすでに消えた、ただ静かな空間だ。 

 星空に見惚れながらもティーカップの片方を雪菜に差し出す。

 「もしかたら告白、受けてくれるのかって少し期待してたのだけど」

 言われた瞬間見なくとも顔が真っ赤になっているとわかり、顔を背ける。

 四日前、一学期の終業式が終わり、帰ろうとした時。雪菜に告白をされた。

 学校内でも美女と言われる部類にいる雪菜に告白をされたとなれば断る道理は無いのだが…

 「まだ、答えは出せない…」 

 雪菜は答えを知っていたかのようにただ黙ってお茶を啜る。

 「あの時の言葉、ついさっきのことのように残ってる。でもやっぱり…怖いんだ」

 過去の記憶が蘇り、心臓の鼓動が早まる。どこか息苦しくなってくる。

 自身の情けなさに歯を食いしばっていると、「でも…」という声が横から聞こえる。

 「今までの茅葉くんなら、アマタちゃんを家に招こうなんてことぜったいにしなかったと思うわよ」

 そう優しく微笑みながら言うと、気を使ってくれたのか「もう遅いし寝るわ」と言い、ティーカップを両手で持ちベランダを出ていく。

 「あのさ…」

 背を向ける雪菜が足を止め目線を後ろに向ける。

 「雪菜はアマタのこと、怒って…無いのか?」

 「そうね…勿論一人の恋する乙女としては嫉妬するところだけど…」 

 雪菜は気恥ずかしそうに赤くした顔を背け、呟くように、

 「私は好きな親友が笑顔で幸せになってくれた方がいいって思ってる…」

 そう言って、小走りで寝室へ戻って行った。

 またしても心臓の鼓動が早まっていることに気づく。が、この鼓動の早まりは悪い気はしなかった。

 

 

 

 

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