第2話  6

 「そうだったんですか。」

 着替えが無いことを知らせようとしていた、ということを話すと、アマタの一息つく声が扉越しから聞こえて来る

 「すみませんでした。茅葉さんの事を変なふうに言ってしまって…」

 「いや、こちらこそごめん。断りも無しにいきなり扉開けちゃって。」

 「いえ!茅葉さんは私の事を思ってやってくれた事なのに…私は…私は…」

 扉越しから聞こえる声はだんだんと小さくなっていき、ついにはきえていく。

 確かにアマタの発言には驚かされたのは確かだが、実際の所悪いのは茅葉だ。アマタにここまで落ちこまれると逆にこっちに申し訳ない気が…

 「じゃあさ、明日隣町まで買い物に付き合ってくれよ」

 「お買い物、ですか?」

 「ああ、そのかわりアマタの日用品とか、欲しいものとか…そういうものとかを俺が買う。それで許して…とは言い難いけど…」

 「それではこちらが申し訳ないばかりな気もしますが…はい、茅葉が言うのであれば!」 

 どこか納得いかない、といった様子だったが、アマタは渋々と承諾する。

 どちらにせよ日用品買いに行かなくては、と思っていた事ではあるし、逆にここまでの美少女との買い物、つまりデートをできると言うならばこちらがプラスになるとも言える。

 脳内で想像される映像に何度か深く頷く。

 そんな中ふと本題が思い返される。

 「アマタ、着替えの件なんだが今友人に持ってきてもらうよう頼んだからお風呂、入っても大丈夫だ」

 じゃあわざわざあそこまでして止める必要はあったのか、とも思ったがあえて声に出さないでおく。

 「何から何まで…ありがとうございます!ではお風呂いただきますね!」

 アマタがご機嫌に言うと、立ち上がる音と共に浴場の扉が開かれる音がなる。

 その音に合わせたようにインターホンの鳴らされる音が家中に響き渡る。

 「来たか、かなり早かったなあ」 

 玄関の鍵に、茅葉の靴を踏みつけながらか手をかける。と、その瞬間にドアが力強く引かれる。

 その開かれた扉の先には、灰色のパーカーに身を包み、漆黒の長い髪をぐちゃぐちゃに乱した整った顔の可憐な少女、茅葉の現在唯一の親友、夜寒雪菜やかんゆきなだ。

 「茅葉くん、私の茅葉くん!私の下着をどうしようと言うのかしら!?」

 顔をグッと近づけどこか嬉しそうな表情で顔を近づけてくる。

 「お、おいお前、メール最後まで見てなかったのか?」

 「見る必要なんて無いわ!『下着』の文字だけで十分よ!」

 だんだんと近づいてくる雪菜の顔から逃げるように一歩、また一歩とさがる。

 「落ち着けって、そういう意味合いで送った訳じゃ無いから…」

 「いいえ、違く無いわ!さあ、さあ!」

 顔が怖いですよ…雪菜さん…

 「ぎゃああああああああ!」

 


 

 

 

 

 

 

 

 

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