第2話 5
「これは…」
久しぶりの部屋に入り唖然とさせられる
幸いにも部屋が一部屋残っており、その部屋をアマタの寝室に…と思ったのだがこの部屋を見てとてもそんなことが言える状況では無くなった。
六畳ちょいの洋室には、あちらこちらに段ボールが山積みにされ、そのどれもが埃を被り、表面は灰色になろうとしている。奥に行かなくとも咳が喉から込み上げてくる。
これはまずいと思いそーっと扉を閉める。
「アマナ、すまないがかくかくしかじかで無理そうだ」
「かくかくしかじか…ですか?」
そう、食器を台所へと持ち運ぶ桃色の髪の少女、アマタは首を傾げる。
「ああ、食器くらい俺がかたしておいたのに」
そう言いアマタが両手に持つ底深い皿に手を伸ばす…が、それを拒むかの様に体を回し、肩の正面を向けられる。
「いえ、お世話になる以上、お客様気取りはあまり良く無いと思ったので…その、簡単な事しかできませんが色々と言ってくださいね!」
今までのおどおどする様子もないしっかりした声に目を見開かせられる。ここまで目を合わせて話されるとーー
「ま、まあ、ありがとう」
目をそらし自身の頬を指でかく。
「ふふふ」
そうアマタが指で口を隠し肩を揺らす。
顔が赤くなってないだろうかと思いとりあえず後ろに顔を隠す。
「そ、そうだ!お風呂沸いてるから入ってきな」
「そうですね、実は汗でべたついてまして」
誤魔化す言葉にほのかに笑いを残しながら返す。
「そこの扉だから」
短い廊下につながる扉に指刺すと、アマタはその方に顔を向け「ありがとうございます」と言いながら、どこか上機嫌に扉に向かっていった。
しかし、なんだろうか。何か忘れているような気が…
「ーーッ!」
完全に欠落していた。
パジャマの代わりになるものなら決していいものではないがある。しかし、この家には親も姉も妹もいない。それを現すことは…そう、下着だ。下着の着替えがないのだ。
まだ間に合うはず。そう思った時にはすでに洗面所へとつながる扉に手をかけーー。
「アマタ!ダメだ!着替えが無ーー」
あ、遅かった…
「か、茅葉!?な、な、な、何で!?」
服の脱ぐ途中でほぼ半裸の状態のアマタが目を回し、顔を沸騰させている。
部屋を駆け出すという思考より先に走馬灯の様に友人の言葉が頭に流れ込む。『ラッキースケベは大体ビンタか拳で締めるものよ』と。
男らしき反応の一切を必死におさえ、オチという名の暴力を覚悟し目を伏せる。
「体でーー」
が、ビンタでも拳でもなく、ボソッと言う声が投げかけられ、少し瞼の力が緩み細目が開かれる。
「体で恩を返せばいいんですよね。わかりました…」
寂しさを感じさせる声と共に、半裸の姿からさらに服が脱がれていき真っ白な肌がのぞく。スーッと服と肌が擦られる音が耳を撫でーー
「って、なんでそんな事は分かるの!?」
記憶喪失の割には変な知識のあるアマタについツッコミを入れる。そしてその勢いでアマタの状況も忘れ、目を開く。
そこには、服どころか布切れ一枚まとわず、自身の真っ平らな胸を腕で覆い隠すアマタの姿が見えた。否、見えてしまった。
そのアマタの顔は気恥ずかしいそうながらも曇った表情で目を細め下に向けている。そしてその眼からは一滴の光を反射する涙。
さて、誤解や偶然で起こってしまった事故だとしても男である俺が女であるアマタの裸を見てしまったわけだ。ここで日本人男児がやることなど一つしかないのではないだろかだろうか。
ひとまず目を強く瞑り、両膝を床に叩きつけ、両手で床を叩く。そしてーー
「すみませんでした!!」
その言葉と共に床に額を叩きつける。つまりるところ土下座だ。
「え、えっとどういう…?」
突然な茅葉の土下座にアマタは目を見開く。
「とりあえず出るから、扉越しで聞いてくれ!」
土下座の大勢のまま額を引きずりながら、ドアノブを掴み後ろにさがった。
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ここまで読んでいたただきありがとうございます。
近況ノート制作後からも投稿が遅れてしまい申し訳ございませんでした。次回からはペースを上げ、出来るだけ早く投稿できるよう努力していきます。
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