第2話 3
「はい。アイスティー」
そう言い、膝を揃え背筋をのばしす桃髪の少女の目の前のテーブルに、ストローのささる背の高い透明グラスを置く。
少女はそれに気ずくと、「ありがとうございます」と言いグラスに手を伸ばす。
アイスティーは、おしゃれ感にも考慮したそれなりの試行錯誤の答えだった。どうだと思い、少女が潤う唇へ運ぶ姿をまじまじと見る。
「んー美味しいです!えっとーこの…ティーアイス!」
そんな少女の無垢な笑顔を見て、彼の彼女もこの位天然ならよかったな。と、出す飲み物という些細なことで彼女と別れた彼を思い、目を細める。
「それで本題なんだけど、ちょとでも覚えてることたかはない?たとえば…名前とか」
結露に濡れるグラスを机上に置いた少女は、顎に手をあてる。
「それが全くと言っていいほど…名前はあま、あま…」
「アマタ…」
はとした時にはすでに口にしていたのに気づく。考えより先に動いていた、に似たようなものか。
しかしなぜアマタなのだろうか、自身言ったものの不思議に思う。
「アマタ…いいですね!」
そう桃髪の少女、アマタは腕を前にし喜びを表にしている。結果的にはまあ、よかったのだろうか。
「アマタ…いい名前です…」
想像している以上に喜んでいる様だ。まさか本当の名前だったりするのだろうか。
「それじゃあ…アマタさん。他に覚えてる事は?」
「ちょっと待って下さい!」
いきなりの大声に一瞬ビクッとさせられた。そんな茅葉を裏目に少し険しい顔でアマタが続ける。
「これからおそらく長い付き合いになります!なのでさん付けじゃなくて『アマタ』って呼んで下さい!」
「あ、はい。すいません」
アマタの熱演にどこか下目になってしまった。だがすぐに声を元に戻る。
「そういえば貴方のお名前も聞いていませんでしたね。お聴きしてもよろしいでしょうか。」
「そういえばまだだったな。俺は茅葉。
「影見茅葉さんですね。改めてよろしくお願いします!」
「こら、こっちも呼び捨てなんだから俺のことも呼び捨てにしてくれ。じゃないと平等じゃないろ」
アマタは一瞬目を見開くと柔らかく笑う。
「ええ、では遠慮なく。ーー茅葉」
心臓の鼓動が大きくなるのが聞こえる。出会って初日に呼び捨ては流石にまずかっただろうか。アマナの可愛さにどこか罪悪感を感じる。
まあドヤっといて今更やめる様に言うのもダサいし…いいか。
そんな中「ぐう〜」という音が部屋の中に響き渡り、思考の中から現実に引き戻される。
見ると、真っ赤に染まり切った顔を必死両手で隠すアマタの姿が見えた。
「ええっとー今何か作るから。ちょってて。あ、アマタ…」
やはり呼び捨で呼ぶのは照れくさい気もする。今考えればクラスでも女子とはあんまり喋れてなかった事が思い出される。
立ち上がり居間を後にする。
ふと、アマタに目を向けると、さらに顔を赤くしている様に見えたが…気のせいだろう。
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