第3章18話 Second Side
「つ、か、れ、たぁ——」
短剣の訓練を終えて、早めのお風呂に浸かってからゾンビのような足取りで自室へ戻る。
1日のうちに2度の訓練は流石にこたえる。湯船の中で眠らなかったのが半ば奇跡だ。ふらふらとベッドに倒れ込んで——
「ジュンくーん、そろそろ夜ご飯の時間ですよー?」
ピトスの声で目を覚ます。勝手に部屋に入ってくるのにはもう何も言わない。
「……寝てた?」
「それはもうぐっすりと」
「全然寝た気がしない……」
起き上がってみると、全身に感じる倦怠感と筋肉痛、未だ解消しないそれらの質の変化によってようやく時間の経過を実感する。すこし寝ぼけているのか、頭がうまく働かないことを自覚する。
「顔を洗ったら食堂に来てください。あと7、8分もすればご飯ができますから」
「了解……」
寝ぼけ眼に、ピトスが部屋を出るのを見送る。再び静寂に包まれた自室に、俺はひとまず布団に潜り込む。
ガチャっと音がして、
「私レベルになるとそこまでお見通しです ……よいしょっと」
ベッドから担ぎ上げられるような感覚が——
「「……よ…星……感謝を…… いただきます」」
気がつけば、食堂の長テーブルの前。目の前には美味しそうな夕食が並んでいる。
「……なんだ夢か」
「ピトスが君を担いできたことなら夢じゃないよ?」
「あー!あー!きーこーえーなーいー!!」
夕飯のメニューは野菜ハンバーグに具沢山のスープ。ここ1、2年の自炊生活の経験からすると、これはたぶん——
「明日あたり買い出しの日だったり?」
「そうですけど、よく分かりましたね」
半ば当てずっぽうに言ってみると、ピトスは感心した様子でそう言って、具材9割水分1割のスープをもぐもぐもぐもぐ。
予想が当たってドヤ顔の俺は野菜ハンバーグをパクッとあっこれ俺が作るのより10倍美味しいガツガツガツガツ。
野菜ハンバーグやスープは冷蔵庫の中身を一気に片付ける際のお決まりのメニュー。他には野菜炒めや具沢山カレーもよく作る。
夜桜家の食材事情はどうでもいいとして、疑問に思うのは——
「人数増えたはずなのに食材が余った様子なのは……」
「私1人の時は買い出しの回数を半分にしているので、元に戻すための調整です」
「……ピトスの健康が心配だな、俺」
食材の鮮度が急に心配になってきた。冷蔵庫とかあったっけ、この世界。昼食を作る時は周りを見る余裕がなかったからな……。
「腐るギリギリをみて加熱処理しているので大丈夫です!」
「ピトスの知らなくていい一面を見た……」
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