第3章17話 修行から修行まで

「つ、かれたぁーー」


 朝練の後は軽く体を流して、しばらくの間は自由時間だ。

 限界まで酷使した体を引きずって庭に出て、気持ちの良い風の吹く芝生に寝転がる。


「朝風呂の習慣は無かったけど、結構いいかもな」


 疲れた体で浴びるお湯は格別だ。その上このだだっ広い庭園は空気が美味しい。爽快な風に吹かれて、暫しの間無心で空を眺める。


「っとと、こうしちゃいられない。配膳の手伝いくらいはしないと」



 そうして、朝日邸はゆっくりと朝を迎える。




   .                 ❇︎                 .



「タンスの上、まだ埃が残ってます」


「あっ、そこ箒じゃなくて濡れ雑巾で!」


「ジュン君の部屋のクローゼットの中は朝に掃除しておきました!」


「褒めて欲しそうな顔が納得いかない!」



   .                 ❇︎                 .



「ジャガイモの皮むきは、包丁じゃなくてイモの方を回すんです。もっと、こう、包丁をしっかり固定してですね……」


「慣れてる感じはするのに下手……!」


「素人だった奴がいきなり必要に迫られたらこうなるんだよ……」


「……肉叩く時無言でやるのやめない?」



   .                 ❇︎                 .



 そして。


「朝日祐希の、ワクワク短剣教室!!」


「朝日先生、今日の訓練メニューは?」


「斬って、刺して、掻っ捌く!」


「聞きたくなかったなその言葉」



「今日のところは、短剣術の基本形と、鞭と両立した戦い方の方針を決めていこう」


「最初からそう言ってよ」


 つまりは、右手に持つ鞭と左手に持つ短剣、互いの長所を殺さず、短所を補って両立させる戦い方を模索するということ。

 取り回しの難しい鞭を扱いながら、同時に短剣も十全に活かしていくのが長期的な目標だ。


 昨日渡された短剣は、二の腕ほどの長さを持った両刃の西洋剣。攻撃よりも防御が主体の運用になる。

練習内容は——


「私が投げるボールをとにかく斬る!」


「……ちょっと段階飛ばしてる気がするんだけど」


「今は色々と不穏だから何があるかわからないし、すぐにでも戦えるようにならないと。基礎は後からゆっくり学べばいいから!」


「すげぇ乱暴な実践主義を見た」

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