断章 エイプリルフールIF短編 『《終焉》の新生』

 今日は4月1日、エイプリルフールです!皆さん何か嘘はつきましたか?今回は「嘘」、つまり本当でないこと、I F ルートのお話です。

 一度は私もやさしいせかいを書こうかとも思ったんですが、最初に出てきたアイデアが地獄なあたり無理だったみたいです。

 

 第2章12話『地獄の門戸は開かれた』から分岐する、潤が逃げ出してしまった仮定I F の並行世界。

 ただひとつ、あの一瞬に彼が狂気の中で、怒りをなして殴りかかるか、あるいは恐怖をなして逃げ出すか。ほんの一つのボタンの掛け違いで、世界はこんなにも変わっていた。








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 ——全てを憎み、そして全てに怯える。それが彼の行動原理だ。





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「ーー現実から目を逸らし、狂気に溺れる。《統率者》ともあろうものが、このような輩だとはな。調停者連中のたかが知れる」



「ひ——」



「か——ッ『神ッ、々の伝令ぇ』ッ!」


 彼は逃げた。友も矜持も放り投げ、全てを捨てて——


 ——彼は彼ではなくなった。



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 外れた螺子ネジは、戻らぬままに。


 全ては彼の、敵となる。



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「これでいいか」


 100均で包丁を買う。ナイフは刺すと刃ががたつきそうな折りたたみ式のものしかなかったので諦めた。一緒に買った小さなショルダーバッグに抜き身で入れる。

 100均で買ったカッターナイフだろうと、人は殺せるのだ。包丁なら、もっと殺せる。



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 この世界は、彼の敵。


 だから彼は、彼を知る者を滅ぼし尽くす。


 この現象界せかいから、消え去る為に。



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「学生全員殺すのは手間だ。同じクラスの奴だけでいい。他は横畠よこばたけか」


 人数は40人弱。


「——なんだ。少ないな。俺の知り合い」


 鼻で笑った。



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 力が、必要だ。


「——っ」


「ぎ——」


 コイツらを殺すのは簡単だ。『神々の伝令』を使って背後に回れば、喉を掻っ切るのも、頸椎を突くのも一瞬で終わる。

 誰も、この教室からは逃がさない。


 シュヴェールトを殺すには、力が必要だ。



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 自らの深淵へ手とを伸ばす。

 《統率者》の力を、無理矢理に引き寄せる。


 そのさらに奥、黒い、どこまでも黒い澱みに手を伸ばす。



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「舘山、お前のこと、嫌いじゃなかった」


「だったらどうして!どうしてこんなこと——」



 漆黒の影が、彼を呑み込んだ。




「目を覚ましてください!夜桜先輩——っ!」


「夜桜?」










 ——「誰だ、ソイツ?」


「——っ!」


 酷く不快になった。彼女は




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 汚濁を呑み込み、力と為した。

 彼の顔は全世界に知れ渡る。



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「あァ、足りない。アイツを殺すにはまだ足りないッ」



「練習。練習だ。もっと強くならないと……」



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 今日もひとつ、都市が滅んだ。












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 ノープロットで書くと何書いても1300文字前後になるね。ダイジェストっぽくなっちゃった。


 ともかく、これは潤の闇堕ちする世界線。狂気から目を覚ますことなく、堕ちていく。自らを知る者(=自らを脅かす可能性のある者)のみを滅ぼすはずが、凶悪犯罪者として報道されて全世界に知れ渡ってしまった。シュヴェールトが強烈なトラウマとなっており、力を得て尚、未だに自分では敵わないと思っている。


 潤はなりふり構わなくなると強くなるタイプの主人公。悪役で出てきたら勝てないかもね。


 能力については本編の潤と同じとは限らないよ。

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