第2章11話 Re:覚悟を問おう。

「桑原さん、あなたを斬りつけたのはきっと、例の『脅威』の配下だろうね。それも、幹部クラスのやつ」


「そうだろうな。大方、一番手軽そうな俺を消しにかかったというところだろう!」


 回復役を先に潰すという理屈もあるのだろうが、彼のしぶとさは想定外といったところか。


「うん。私達のとこにも殺し屋は来たけど、様子見の雑魚だった」


 散々な言いようだな。ひっでぇ。……じゃなくて。


「ちょっと待ってくれ、俺がおいてかれてる!『脅威』ってなんのことだ?」


「あ、まだ説明してなかったね。調停者が2世界の均衡を保つ存在だって話はしたよね。世界を脅威から守るのも調停者の役割なんだ。ひとくちに脅威って言っても、パンデミックやら、世界大戦やら、はたまた向こうの世界からこっちに魔獣がやって来たり、いろいろだ」


「魔獣を招いたのは朝日の失態だけどな!ははは!」


 この人遠慮ないな。


「……ちょうど私たちが高校に入る少し前のことだけど、《神託者》から連絡が来たんだ。『今までで一番大きな脅威が訪れるようだから、祐希も気をつけて。それと、××高校に《統率者》が入学する予定だから、侵入しておいてほしい』って。もう入試終わってたのに潜入とか軽く言ってくれるもんだよね。まったく」


 うーん、完璧に無視した。一応年上だからな?桑原さん。そうそう怒らなそうなだけに、怒ったら何言っても聞かなそう。くわばらくわばら。


「ともかく、その脅威が一体なんなのか、ってことは私たちにもまだよくわかっていないんだ。けどひとつ言えるのは、これは今までにないほどの脅威だっていうこと」


「襲撃からして、自然災害ではないだろうけどな!」


 祐希の説明に、桑原さんが補足する。


「……大体わかった。ところで最近祐希が真面目過ぎじゃ無い?」


「君も大概ボケ担当に転身しかけてるけど」


 おかしいな、そんなつもりは……


「——本題に入るよ」


 祐希が緩んだ空気を引き締める。


「桑原さん、今回は敵の情報不足でたまたま、あなたは殺されずに済んだ。……けど、このまま調停者として動き続けて、それが敵の耳に入ったら今度こそ殺されるかもしれない。このまま力を使わず隠れていれば安全に暮らすことも出来ると思う。——どうする?桑原さん」



 俺への問いと同じ、覚悟の問い。彼女は必要とあらば自らをなげうってでも、彼の意思を尊重するだろう。


 ——それはとても高潔で、とても危うい在り方だ。



「気を遣ってくれてありがとう!だけど俺は隠れてみんなを見殺しにするつもりはないさ!」


 桑原さんは迷うことなく、そう答えた。



















「それは結構な心意気だな。」





「だが、もう手遅れだ」




殲滅アナイアレーション

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