第2章4話 コマンダー・クライシス

 えーと。ここ平原だった。魔獣撒けないじゃん。祐希息切れてるじゃん。


「どうすれば……っ!」


 野生動物に遭遇した時の対処法はたしか……背を向けない、走らない、刺激しない。全部破ってる!!そりゃ魔獣も群れ総出で追いかけてもくる訳だ。そんな益体もないことを考えてしまうくらいには、俺も追い詰められている。


「これからずっと!私と一緒に闘い続ける覚悟はある?」


 ——それはおそらく、今魔獣と戦う事のみを指している言葉ではない。祐希は、何かもっと大きな闘いに身を投じる覚悟を俺に問うているのだ。


「これから!今のこの状況が生ぬるく思えるような状況に陥ることが何度もあると思う!今なら君はまだ引き返せる!君がもし今まで通り平穏な日常を送りたいと思うのなら、私はそれを命を賭して叶えて見せる!」


 ——もし俺がこの問いに首を振って、目の前の現実から遁走すれば、祐希は必ず死ぬ。たとえ今生き抜いたとしても、俺の分まで無茶をしていつか必ず死んでしまう。現在進行形で足を引っ張って無茶をさせているくせに、そんな直感だけがあった。


 俺は巻き込まれただけなのだ。彼女の手を取ることができなくとも、誰が責めよう。——だが。


「お前を見捨てた日常に意味があるかよ!!祐希!何をしたらいい!」


 俺の返事を確信していたように、祐希は間髪入れず叫ぶ。


「夜桜潤!君は全ての可能性を秘めた《統率者》だ!《デミゴッド》と同調しろ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る