07「経営再建への正念場」

 予測は悪い方へと当たるものです。魔獣の数が増え始めました。


 私たちはギルドに緊急クエストを要請。ベテラン冒険者たちも加わり、主に防戦といたしました。


 報酬は節約せねばなりません。



 私も森に入り各持ち場を回ります。


 慣れとは恐ろしいもので、私も小物ぐらいなら倒せるようになりました。


 もう令嬢を返上しなければいけませんね。


 初級者コースなら、こちらでも家庭教師ができそうです。



 警備クエストは一進一退を繰り返しますが、数が一気に増えました。


「撤退だ、全員撤退せよ! 警戒線まで一気に引くぞ」

「あっ!」


 無様に転び泥だらけになった私を、エドが抱きかかえ逃げてくれます。


「悪かったな。お客を戦いに巻き込んじまった」


 右から左から、木の上から小形の魔獣が襲い掛かってきます。エドは魔力障壁を張りながら森を駆けました。


「私も戦います――」

「ダメだ! 足手まといになる。引くときは一気に引くのが戦いのコツさ」


 周囲の木々の間に、やはり撤退する冒険者たちの影が見え隠れします。


「なんとか間に合ったか――」


 私たちとすれ違う数人が、次々に魔獣を切り裂きました。見ない顔です。


「彼らは?」

「昔の仲間さ。王都から呼んだ」

「腕自慢さんたちですね」


 コンサルタントが企画していた、次の一手が間に合ったようです。


 私たちは無事に森を抜けました。


「センパイ! 女性を抱きかかえて逃げるのが仕事ですかあ?」

「それがコンサルなんだよ。いいか、深追いはするな」

「リョーカイです。では、僕も行ってきます」


 若い冒険者は周囲を見回してから、森の中に駆けて行きました。


「強いヤツらだ。もう安心だよ」


   ◆


 危機はなんとか凌ぎました。街の周辺は落ち着きつつあります。


「やつらへの報酬だけどね。借りにしておいた。そのうち俺が払っておくよ」

「なら。私はエドへの借りにしておきますね」

「こちらの事情は知っているからな。やつらから聞いたんだけど――」


 エドは珍しく言いよどみます。


「何ですか?」

「調べてもらっていた。ヴァイノラ家、領地の経営権を売りに出しているようだ」

「えっ?!」

「調べてみようか。どうする?」

「お願いします……」


 いったいどうしたことなのか? あの家はかなりの資産を持っているはずです。

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