第4話

 次の日、俺は反旗を翻した。

 意思を伝達させる。その方法には幾つかあると思われる。

 まず一つ目に言葉で伝える方法。これは無理だ。発声器官が俺には備わっていない。

 二つ目に文字で伝える方法。これは効果があると思ったが、何故か伝わらなかった。

 三つ目は態度だ。態度でもって、示す方法。目下、俺はそれを実践している。


「おい、どうした……?」


 飯をくれるおっさんが来たけど、俺は飯に手を着けない。そっぽを向いて、地面に鎮座している。

 何だったら胡座をかいてやるぐらいの気持ちなのだが、ケツに負担がかかったのでやめた。


「元気ねぇな……病気か? 出荷が近いってのに」


 おっさんは何やらボソボソと独り言を呟きながら帰って行く。珍しく小難しい顔をしていて、何だか良い気味だった。

 途中「金が」とか「処分が」とか聞こえてきた。

 地面には昨日と同じく、鼻で『ペン』と書いた跡だけが虚しく残る。


 どうすれば相手に伝わるのか。

 押しが足りないのかもしれない。もっとグイグイ行ってみるか。

 そうだ、俺が他の個体とは違うって事を分からせてやればいいのか。

 そう判断した俺は夜中、一晩中絶叫をあげた。ブーしか出ないが、朝までリサイタルのつもりで熱唱した。


 翌朝、俺の殺処分が決まった。

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