第7話
チヒロちゃんは立っている私を見上げた。
「そうー。ムーミン好きなの。」
と言うと照れたようにうふっと笑った。モエちゃんもチヒロちゃんみたいなふんわりとした笑顔だった。なんだか2人は似ている気がする。セリナは続けた。
「実はね、私もムーミンが好きなの。だから。」気が合いそうと言いかけて恥ずかしくなって黙ってしまった。チヒロちゃんは「そうなんだあ。」と言ったあとに、「ムーミンかわいい。」と続けた。「うん!」とセリナは答えた。2人といると、時間がゆっくり流れているような気がする。保健室にいるときみたいだ。今にも保健室で流れているあのオルゴールの音がきこえてきそうだ。
スズカたちのグループから大きな笑い声がきこえてきた。教室中の皆がスズカたちのほうを見る。注目を集めたくてたまらないといった声でスズカが「やばーい」と言いながら手を叩く。チヒロちゃんとモエちゃんは目を合わせて、困ったような、でも優しい笑顔でうふふ、と笑った。教室のみんながそうする。うるさいな、と思っても、スズカたちにそんなことを言える人は誰もいない。みんな怖いのだ。次の日から、セリナはチヒロちゃんとモエちゃんと居ることが多くなった。2人といると、スズカたちのグループの人と関わらなくて済むからだ。チヒロちゃんとモエちゃんといるようになって、私はスズカたちと全く合わなかったのだ、ということに気づく。話すテンポが合っていなかったのだ、そもそも。遠くから見ていると、スズカたちはかわいいものやオシャレなものが大好きで。大人数で集まって騒ぐのが好きで。私は少人数でまったり過ごすのが好きで。ただ単に合わなかった、それだけのことだったのだろう。
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