第4話
スズカのお母さんはかわいい。お母さんは鏡の前で長い髪を巻いている。今日はお母さんと2人で買い物に行くのだ。鏡の中からスズカと目が合う。スズカ、準備できたあ?という声。「そうだ、お母さんの帽子被ってみたら?」ピンクのベレー帽。お母さんが帽子を頭に乗せてくれた。香水の匂いがふわっと香る。「かわいい!似合おうじゃない。」とお母さん。ブーツを履いて家を出る。お母さんと町を歩く。モデルみたいにすらっとした足、金髪のロングヘア―はウェーブしている。お母さんは、どこからどう見てもギャルにしか見えない。背筋をピン、と伸ばして、コツコツ、とヒールを鳴らしながら歩く。お母さんはかっこよくてかわいい。ヴィトンの店に入った。「スズカー、これとこれ、どっちのバッグが似合うと思う??」ときいた。スズカは、白っぽい方を指さして、こっちかなあ、と言った。お母さんは、鏡の前で吟味したあと、「ふーん、スズカが言うなら、」と、白に金色の文字でLVとかかれたバッグを選んだ。スズカは鏡の前で立ち止まった。私もお母さんみたいにかわいくなれるだろうか。お母さんみたいな髪型にしたくて髪を伸ばしている。お父さん譲りの一重の細い目を見る。お母さんは二重でぱっちりした綺麗な目で、モデルみたいだ。スズカはハルちゃんを思い浮かべた。セブンティーンに載っている同い年のモデルだ。ハルちゃんはデビューしたときから一番かわいくて、案の定、いまでは一番人気のモデルになった。今月号で三回連続の表紙だ。ハルちゃんみたいにかわいくなれたら、お母さんはもっと私を見てくれるだろうか。「スズカ、はやくしちゃいなさい。」そう言われて、慌ててお母さんを追いかけた。薬局の前で、立ち止まった。香り付きのリップが並んでいる。これ、ハルちゃんも使ってたやつだ。「何?これが欲しいの?へー、最近はこういうのがはやってんのねえ。」そういうとお母さんはリップを手に取って匂いを嗅いだ。ただいまー、家に帰ってきた。家では弟2人とお父さんが留守番をしている。弟たちはゲームに夢中だ。「なんだあ。ルイくんいないのお。」とお母さんはがっかりしたように言う。ルイくんはお母さんの一番お気に入りだ。弟たちの中で一番顔が整っているから。誰かが言ったわけじゃないけど、スズカはそう感じている。ルイくんはお母さん譲りのくりくりした目で、モデルみたいだ。「ルイ、友達と遊びに行った。」と一番上のヒロが言う。お母さんは「そっかあ。」とつまんなそうに言う。お母さんはあまり料理が得意じゃない。だから、いつも外食かお父さんが作る。「んー、おいしい、」おいしいと思っているのか思っていないのかわからないような声でお母さんが言った。そのとき、ガチャガチャ、と玄関から音がした。「ただいま。」と小さな声がきこえる。「ルイくん!?」お母さんの箸を持つ手が止まる。リビングに姿を現したのは、二番目の弟、ルイだ。「ルイくーん。お帰りー!!」お母さんはお帰りのハグをした。ルイはもう慣れっこなので、大人しくハグされに行っている。スズカはお母さんが言ってくれた言葉を思い出した。「弟がみんな独り立ちしたら、スズカと2人で暮らすのよ。楽しそうじゃない?」スズカはその言葉を信じている。スズカはお母さんが好きなのだった。
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