第3話
今日はグループ授業だ。
六人ずつで、机をくっつける。どの人の考えが良いか、グループで意見をまとめて発表するのだ。
セリナは持っているプリントを見た。
「環境問題を解決するために、わたしたちができることはなんだろう。考えよう。」とかいてある。
プリントを回し読みした。同じ班になったサエが「えっと・・・どの人の意見が良いと思った?」と皆に聞いた。みんなは「うーん・・・」と言い出すのをためらっているようだった。
目の前に座っていたイオリが口を開いた。「セリナちゃんの案が良いと思う。」
目が合った。イオリは真直ぐセリナの目を見て笑った。キラキラしていた。出てくるとは思わなかった名前が出てきてセリナは驚いた。イオリとはあまり話したことはない。なのに、なんで。「セリナちゃんの考えって個性的で面白いと思う。」さっきと同じようなキラキラした瞳で続けた。
このクラスになって、誰かに褒められたのは久しぶりで。嬉しくて恥ずかしくて、上手く答えられなかった。すると、他の子も「たしかに、セリナちゃんの案、良いかも。」と頷いた。イオリって私のことを好意的に思ってるんだ。ということがなぜか、伝わってきた。
こんな風に思っていることを堂々と言えたらどれだけ良いだろう。イオリのように。そう思った。
イオリはショートヘアーでボーイッシュな性格の子だ。イオリはグループは違うが、色んな子と仲が良い。みんなの人気者だというのが見ていて分かる。セリナはイオリのことをどこか遠い人のように感じていた。グループも違うし、関わることは無いんだろうなあと。心のどこかで思っていた。
それが、今日変わった。イオリは私のことを見ていたのだ。このクラスに、私のことを見ていた人がいたのだ。それが、セリナにとっては大きな発見だった。イオリは素直で、いつも自然体で、皆から好かれるのは分かる。クラスのよどんだ空気をきれいにしてくれてるみたいな子。セリナはいつも楽しそうなイオリの姿に憧れを抱いていた。
体育の授業中、イオリが良い記録を出した。みんなに「すごーい!」と言われて、照れて笑っている。セリナもイオリに言った。「イオリ、すごいじゃん!」イオリは真直ぐにセリナを見て言った。「セリナ、ありがとう!」さらに、何か話そうとしたところで、スズカたちが来て、遮られてしまった。「おい、イオリ―!!」イオリも「なんだよー」と答える。イオリともっと話してみたいな、とセリナは思っていた。
音楽の授業のあと、セリナはイオリにきいてみた。「イオリってどうして私を選んでくれたの?グループ授業の発表のとき。」席が近いので、音楽の授業のときは話しやすいのだった。
すると、イオリは「なんでって、セリナちゃんの意見が一番正しいと思ったから。」と、グループ授業に時と同じように、はっきり言いきった。「セリナちゃんの意見って面白いよ。みんなと違うっていう感じがする。」そう付け加えて。「そうかなあ。」とセリナは答えた。「面白い」かあ。セリナは胸の奥が温かくなった。
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