第48話 約束の時
そして、祭りは終わった……
無事、全ての町を周り終え、自分たちの町へと戻り、片付けに入る青年団の面々。
そして、片付けが終わると宴の時間である。
「あー疲れた……」
「飲もうぜ!」
「これから本番やろ!」
後片付けの終わった仲間達が古屋形町公民館へと向かう。
みんなが陽気に向かう中、一人だけ足取りが重い者が居た。
「……………………」
「ほら行くぞ! 自分の足で歩け!」
「酔って倒れそう……………………」
「途中から水しか飲んでなかっただろーがお前!」
「……………………」
半泣きになりながらもゆっくりと進む隆幸。
羅護とツギオの二人は背中を押しながら前へと進ませる。
「やっぱり無理だって! 俺には出来ねぇ!」
「ったく、お前は肝心な時にヘタレになるな!」
「普段はギラギラ尖ってるのにねぇ………」
怖気づく隆幸に呆れかえる二人。
一進一退を繰り広げながらも公民館に何とか辿り着く三人。
「ほら、頑張ってやるんだぞ?」
「う~………」
「結果はちゃんと俺の方で団長に報告しとくから!」
「公開処刑じゃねぇか!」
半泣きになる隆幸。
羅護は苦笑いをしつつ、公民館の裏に回る。
すると……
「あれ? 居ない?」
公民館裏には誰も居なかった。
そこは山の崖下になっており、少々木が生えているだけなので見間違いようがない。
誰一人として居ない寂しい所で立ち尽くす三人。
するとツギオがにやりと笑って言った。
「まだ来てないだけかも?」
「いや、多分来んやろ?」
「後から来るかもしれんぞ?」
「いや、来ないって!」
「絶対来るって!」
一刻も早く逃げたい隆幸とそれをさらに否定する羅護とツギオ。
しばらくの間、押し問答をするのだが……
「じゃ、頑張れよ」
隆幸を置いて二人は公民館の中へと入っていった。
「絶対来んやろ……」
誰も来る様子の無い裏で立ち尽くす隆幸。
ふと、ある木が目に入った。
「そういや、相合傘書かれたりしてたな……」
木に色んな相合傘が書かれていた。
もっとも……
「描き過ぎでえらいことになってるな……」
小学校の時に相合傘が流行るとみんなして書き合ったのだ。
結果……
「組み合わせが複数あるんだけよなぁ……玉響はモテるから多いな」
複数の相合傘に名前を連ねる人物も多い。
やはり人気者には偏るのだろう。
それは良いのだが……
「そういや、一回あいつらに冷やかされて書かれたっけ……なんでか知らんけど団長は知っとったな……」
一回だけ『隆幸♡遥華』のパターンがあったので、書かれた場所を見つける隆幸。
「この頃みたいに何も考えずに……うん?」
自分達の分が書かれてあるところに小さな付箋が張り付けてあった。
(ひょっとして……)
付箋には『山裏の空き地で待つ』と書かれてあった。
(遥華のメッセージか?)
隆幸はどうすべきかを少しだけ考えて、公民館の中に入る。
中に入るとツギオと羅護が入り口付近に待っていた。
「どうだった?」
ワクワクした顔で尋ねる羅護に隆幸はこう言った。
「振られたみたいだわ。もう帰るわ」
そう言って隆幸は公民館から去った。
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