第3話 宝満祭り
西暦200X年 10月某日 I県金剣町
「「「「チ〇ポチ〇ポと威張るなチ〇ポ♪ チ〇ポチャンぺのつまよーじ♪」」」」
卑猥な歌を歌いながらお祭り男たちが『造り物』と呼ばれるおみこしのような物を担いでいる。
『造り物』とはI県の金剣町の伝統行事『宝満祭り』で練り歩く神輿のようなもので、源平合戦の時に朝廷への抗議として、町のお神輿を全部京都まで持って行って練り歩いた際に神輿を置いて行くという事件があった。
その時に唯一返ってきたのが金剣町の獅子吼神社のお神輿でそれ以来、祭りの時には神輿を手作りで担ぐようになったと言われている。
その祭りで歌われる祭り歌が……
「「「「チャンぺチャンぺと威張るなチャンぺ♪ チャンぺチ〇ポのうえきばーち♪」」」」
こんな感じの歌である。
ちなみにチャンぺとは石川県の方言でマ〇コのことである。
男たちの前で音頭を取る人が声を張り上げる。
「チャーンぺ!(方言)」
「「「「チー〇ポ!(標準語)」」」」
「チャーンぺ!(方言)」
「「「「チー〇ポ!(標準語)」」」」
「チャーーーーンぺ!(方言)」
「「「「チーーーー〇ポ!(標準語)」」」」
大声で卑猥なことを叫びながらも自らが作った造り物を担ぐ男たち。
造り物として作られるのは特に決まっている訳では無いが、時代絵巻などで使われる昔の武将や偉人が多く、古式所縁の日本を感じさせる物が選ばれることが多い。
そして彼らが担いでいるのは……
でっかい松茸とあけびである
造り物で前に備えつけた立札に『山の珍味』と書かれてある。
それを担いでいる男たちは大きな声で元気よく歌う。
「「「「山のアケビは何見てひーらく♪ 下の松茸見てひらーく♪」」」」
要はそう言うことだ。
さて、その造り物を担ぐ男たちの隣では獅子舞が行われている。
宝満祭りに欠かせない、もう一つの名物『棒振り』である。
I県の祭りにはちょっとした特徴があり、昔の殿様が幕府に隠れて武芸を奨励するために獅子と戦うやり方の獅子舞を作ることで武芸を伝えていた。
その名残で金剣町の獅子舞は『棒振り』と呼ばれ、獅子と侍が戦う様子を描く剣舞である。
その棒振りも長い年月を経て各町で色んな流派が生まれたのだが、その中の一つ『古屋形町』の棒振りであり……彼らはそれを振るっている。
「オリャァ!」
「「ソリャァ!」」
獅子を持つ男の前に三人の少年がそれぞれの得物を持ち、頭には「シャンガ」と呼ばれる長い髪のカツラのようなものを被って首を振っている。
シャラシャラ! シャラシャラ!
獅子も負けじと首を振っており、その勢いは衰えることは無い。
「ソリャァ!」
「「オリャァ!」」
太刀を持った少年の合図に薙刀、鎖鎌を持った少年が得物を振りまわして踊る。
そして……
カン! シュッ! カン!
得物同士を合わせて互いの攻撃を避けてから合わせる。
そしてまた首を振る。
こんな感じで剣舞が進んでいくのだ。
何度か得物同士を合わせた後、突然鎖鎌を持った少年が得物を合わせた所に鎖をひっかける。
「「「オリャァ!」」」
三人が同時に離れて今度は素手で剣舞を始めた!
「オリャァ!」
「オリャァ!」
「オリャァ!」
相手を投げたり蹴ったりするのは剣舞とは言えないかもしれないが、それをやり合う三人。
やがて、三人は中央へと集まって……
「「「セイセイセイウェィ!」」」
ぴったりと息を合わせて獅子へと拳を構える。
「ピー♪(指笛)」
「良いぞ良いぞ!」
「行け行け!」
口々に囃し立てて盛り上げる仲間の面々。
「「「オリャァ! セイ!」」」
ゆっくりと獅子へと向かう少年達。
シャラ……シャラ……
それに合わせて獅子の首もゆっくりと動きが弱弱しくなる。
そして、三人の少年達がそれまで一番大きな声を張り上げた。
「「「オリャァァァァァァ! ヨイヤァ!」」」
三人の少年の最後の一撃を受けて力なく獅子が大きく首を項垂れさせる。
パチパチパチパチ!
見ていた人たちが盛大な拍手を送る。
だが、三人の少年がそれに答えることも無く大きく息を吐いて立ち上がった。
そして頭に着けたシャンガと呼ばれるカツラを取る。
「はぁ」
シャンガからツンツン頭の精悍な顔つきの少年が出てきた。
「やべぇ……間違える所だった」
そう言ってツンツン頭の少年は苦笑していた。
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