かかってこいよ!

 【マップ】ではフレンド登録したスズが目の前にいるっとなっているけど…。


『おっ、ワールドアナウンス』


ーーーメッセージには、我が親友がネームドを倒したとっている。


『ってことは~?』


『ヨミ~~~♪』


 誰もいなかった荒野からスズが現れ、私を見つけて笑顔で駆け出してくる。


『お疲れっ!スズ♪』


ーーーが、

 横に立っているとその連れを見て、機嫌きげんすごく悪くなった。

 

 落差が激しいな……


『…誰、そいつ?』


『あー、彼はね『久しぶりだね、スズ君』

 え、知り合い?』


 スズに聞く。


『ううん。知らないよ』

 

 即答だったわね。


『はははっ!それはあんまりじゃないか』

『同じ、だったよね?』


 へぇ~、スズってテスターだったんだ。


『で、誰? 

 それと、私の、ヨミに何か用?』


『……本当に覚えてない?

 【バトル・ロワイヤル】の準々決勝で戦ったんだけど…』


『【バトル・ロワイアル】の相手なんて、女以外は覚えてないわよ』


『あはは…、さすが男嫌いって宣言していただけはある』


ーーースズ、何を宣言しているの……


『なら、改めて。俺はアーサーだ』

『それで、ここにいる理由は…仲間が君が倒したネームドに倒されていてね。一緒にリベンジするつもりだった』


 パーティーを組んでいる時にも、ネームドの発現条件が合えば戦えるらしい。

 ……発現条件は、まだ分かっていないけど。


『この辺りでモンスター狩りをしていたんだけど、掲示板けいじばん【女神】が遠くで立っているのが見えてね』

『話しかけたら、スズ君がネームドと戦っているって言うものだから、こうして次の手番を待っていたというわけさ』


 アーサーさんが私と一緒にいる理由を話す。

 そして、『ついでに…』と話し出す。


『今度、【クラン】機能が導入されるから、俺のクランの【英雄譚えいゆうたん】のねてね』


ーーーそう、次のイベント【モンスターズ・パニック】のイベント終了後にアップデート期間があって、【クラン】機能が追加される!


 【クラン】とは、冒険者ギルドや商業ギルドといった運営が用意した公共のギルドじゃなくて、個人で作ったグループのことだって。

 ギルドと分ける際に活用されるみたいね。


『なっ!…ヨミ?

 この男のとこに行くの!?』


『いや…『俺は実力者を集めていてね、テスターを中心に集めているんだ』』


 アーサーさん、かぶせてくるな~


『テスターではなくても、ヨミ君のネームドを倒した実力は俺のクランに欲しい』

『もちろん!スズ君も【英雄譚】に誘いたい』


ーーーそのスズは、身体をプルプル震わせながら言い切った。


『私もヨミも、あなたのクランには入らないわよ!』

『だって、ヨミと私は2人で最強のクランを作るんだもの!』


 ……。


 え?なんだけど?


『それは……本当かい?』


 アーサーさんが私に聞いてくる。


 うん。知らないよ♪



 スズを横目で見てみると、うつむきながらも、チラチラと私を見てくる。

 スズは男嫌いだから、彼のクランには入りたくなくて、咄嗟とっさに嘘をついたのだろう。


ーーーふふっ、心配しなくてもスズを置いていかないよ。


『そうね。、クラン【黄泉よみ送り】を作るわ!』


『!!!。ヨミ~♡』


 スズが満開の笑顔で抱きつく!…しょうがないわね。


 ……って、ぐな!吸うな~!


『交渉決裂かぁ』

『だけど、【最強】を名乗るなら俺のクランとはいずれ戦うことになる』

『その時は全力で相手をさせてもらう』


 アーサーが笑いながら言ってきた。


『お手柔らかに』


 彼、強いから相手はしたくないな~。


『なんなら、今…戦ってもいいけど?』


ーーースズ、挑発しない!


 今、別れる雰囲気だったでしょ!


『ネームドと戦った後だろ?休んだほうが良い』


 そうそう!


『ーーーでも、連れが【女神】と戦いたいらしくてね…』


 ……は?


『アーサー!もう、終わったか?』


『あぁ、終わったけど、ライルは【女神】と戦いんだろ?』


『俺だって戦いたい!』


 アーサーさんの連れの男の子が話に入ってきたと思ったら、顔がそっくりなもう1人の男の子が割り込んでくる。双子だぁ。


 双子は、ヨミの目の前でヨミと戦う順番を言い争う。


 いや、戦うとは……


『カイル!ライル!』


 私が苦笑いしていると、こちらの様子を見守っていた大柄おおがらの女性が近づいてきた。


『ヨミさんを困らせるんじゃないよ!!』


『『マーサ姉……』』


 おぉ、2人が一瞬にしてシュン…となった!


『ごめんねぇ~、うちの愚弟ぐていが迷惑かけちゃって!

 あたしは、こいつらの姉のマーサ』

『今日はネームド戦だけ付き合って、ソロに戻ろうと思っていたけど、あまりにも見苦しかったから前に出ちまったよ!』


 カラカラ♪と笑うマーサさん。


『『でも、戦いたい!』』


『あんたたち!まだ言うのかい!『あの~』

 …なんだい?』


 私がマーサさんと双子の話に入ったら、不思議そうな顔をして、こちらに顔を向けるマーサさん。


、でもいいですよ』


 正直、今はスズを祝いたい気分だし、早く解散したい!


『……?まとめてかい?』


『はい』

『まとめてかかってくれば?です』


『『…』』『…』


 うわぁ、3人とも言葉を失ってるね。


『『……おもしれぇ』』『…いいのかい?』


『ついでに、マーサさんもどうぞ!』


ーーー多分、勝てるしね!


『へぇ~、言うねぇ♪』


………………

…………

……


 【対戦】を許可すると戦闘フィールドが作られ、お互いが30メートル離れた場所に立っていた。

 ちなみに、スズとアーサーは外で【対戦】が終わるのを待っている。


 スズが男性と二人きりなのは……あっ、始まる!

 


ーーーカウントが10から始まり、0になると開始の合図が鳴る!


『『いくぜ!』』


 狼系の獣人の双子が走ってくる。


『我がかせき放つ。今こそ、真価しんかの時』

『【神気解放】』


 全身から光を溢れさせ、背中に光の輪を顕現けんげんする!

 

 準備完了!


『俺が先だ!』


 ライル君が手に持った大鎌で袈裟けさ斬りに斬りかかってくる。


 物騒ぶっそうだよ~。


『【神速】!【ぶっ飛ばし】!』


『ぐえぇ!!』


 大鎌が振り切られる前にふところに入り、腹パンをお見舞い!

 殴られたライル君はカエルのような声をして、後続こうぞくとして走っていたカイル君にぶつかる!


『うわぁ!

 ライル!危ねぇだろ!』


『戦闘中だよー!』


 追撃ついげきに、2人まとめて殴りかかる!


ーーーおっと!【回避】。


『【パンツァー】!!!』


 危ない、危ない!


『あたしを忘れちゃぁダメさね!』


 フルプレートで大盾持ちがこんなに速く動けるとは思いませんよ!マーサさん!


『(なら…)【跳躍ちょうやく】!(からの…)【星落とし】!!』


『【鉄壁】【硬化】!』


 マーサは大盾を上に向ける。


ガンッ!ドンッッッ!!!


 ……防がれるか。ちょっぴりショック。


 でも!


『【雷神の拳】!』


 拳が大盾と、スキル発動!


『なっ!?……がっ!?』


 大盾を伝って雷がマーサを襲い、【麻痺まひ】状態にさせた!


『よし!……うぉ!?』

 

『【ターゲット】!【連射】!』


『【瞬足しゅんそく】【デットリー・スラッシュ】!』


 スキル発動をする声が聞こえたので振り向くと、ライル君の大鎌が私の首を狙っていた!


『(【見る】)』


 集中すると、目に映る光景はスローモーションのように流れ始め、その刃と首の間に手を滑り込ませる。


『【神威かむい】』


『ッ!?

 【回避】!……くっ、離せよ!』


『よいしょ~!』


『ぐぁああ!?』


ーーーヨミは大鎌がせまってきたからつかみ、……それを矢避けにした。


『【三日月蹴り】!!』


 ヨミの蹴りが、矢を受けて瀕死ひんしになったライルにクリーンヒットしてHPを0にする!


『まず、1人!』


『ライル!?』


 次に、優先するのは……


『ば、化け物!』


心外しんがい!?』


ーーーまったく、に向かって、なんて暴言!


『守るたみのため、我は、盾で全てをおおう!』

『【守護神降臨・アテナ】』

『【アイギス】(こぶし)!』


 私は【アイギス】(拳)を作り、カイル君に接近する!


『くそっ!【速射】【パワー・ショット】!』

『固すぎだろ!【ツイン・ブラスト】!』


 カイルは左右のボウガンで矢を自動で放つ……が、その全てが【アイギス】ではじかれる。


『まるで、矢の雨ね』

『【アイギス】拡大展開、【タックル】!』


『クソッ!こんな簡単に『【フルスイング】!』…うわあああ!』


 ヨミは急接近した後、カイルの右腕を掴んで振り回し始める!


スキル

【フルスイング】技

 掴んだ物を回せば回すほど威力が上がるが、対象の大きさや、回した回数によって、必要攻撃力が上がる。


条件

・自分より大きい物を回す

・【攻撃】が100以上


ーーーそして、離す!


『ホ~ムラン♪』


 遠くの結界にぶつかったのを確認!


『裁きを受けよ!なんじいかずちを!我に勝利を!』

『【裁きの千雷】!』


ーーーなんとか、起き上がったカイルには無情にも極太の雷が落ちるのだった。


『これで、邪魔者はいなくなったね!』


『……何言ってんだい?

 まだ、あたしがいるよ!』


 後ろで、ようやく【麻痺】が抜けたマーサが立ち上がる。

 


ーーー今、以外に、このフィールドにいる者はいない。


『ねぇ、マーサ。

 私…クラン作ることになっちゃったんだけど、私のクランに入らない?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る