私、女神になりました♪～MP頼りのステータスで敵をボコボコに！～

ネームドは序盤の序盤から！？ ③

　私は右手に握（にぎ）り拳を作って、その周りをギリギリで囲むように【アイギス】を展開させてから突撃した！

『ギャァアアアアアアアアア』

　【インセクト・キング】が【恐怖】を含（ふく）んだ鳴き声を放ったみたいだけど、私には効かないよ！

『MP消費量から計算すると、【アイギス】（拳（こぶし））は20分は続くはず』

『説明を見れば特に時間指定がないし、MP回復薬を使えば半永久的に使えるわ！』

　私は走る。

　今度は木を盾にするのではなく、自分の右手を盾にする。

　しかもサイズを抑（おさ）えているため、固いし、MP消費量は少なくて、コンパクトで、関節を通して展開していないために動きやすい！

『ギャジャ！ジャ！ジャ！』

　特大サイズの酸弾が3連続で私に迫（せま）った。

　私は酸弾をギリギリでかわし、すれ違い様に右手だけに当ててみる。

『一瞬だけ耐えて割れちゃった！』

『でも、【アイギス】（拳）！

　（よし、繰（く）り返し使える。）さらに、【アイギス】×2！』

　【アイギス】3重障壁！！！

　合計3枚の障壁で接近するヨミに【インセクト・キング】が鉤爪（かぎづめ）を乱雑に振り回す！

　右手の【アイギス】を盾にして通り抜け、【インセクト・キング】の身体が鉤爪が振り替わると同時に同じ向きで回り込む。

『【乱打】！…やっぱり、羽の付（つ）け根（ね）が弱いかな！』

『……でも、防御力が桁（けた）違いだねぇ！？』

　【アイギス】で包まれた右手ではダメージは出ないが、【乱打】は片手や足でも発動はできるのでダメージ効率は悪くない。ちなみに、私は両利き。

　あっ、油断した。

　【インセクト・キング】が激しく暴れ出し、腹に乗って攻撃していた私の身体が宙（ちゅう）に放り出される。

　さらに、【インセクト・キング】の鉤爪が空中にいる私を捉（とら）えた。

　（【アイギス】拡大展開）

　合計3枚の障壁を広げることで、鉤爪が振られる前に【インセクト・キング】に障壁をぶ（・）つ（・）け（・）て（・）私ごと強制的に距離を作る！

『あ、危なぁぁぁ…、

　あの攻撃は即死レベルだね。触（ふ）れただけで障壁が全部割れちゃったし』

『しかも、MPが残り2割か。回復しないと』

　だが、目の前の敵はそんな暇を与えはしない！距離を取るヨミに再（ふたた）び斬撃を飛ばし出す！

『【神速】、【回避】……ぎりぎりぃ』

　そろそろ、【神気解放】の効果時間が終わってしまう。

　クールタイムは数秒かかるから急いで時間を稼（かせ）がないと。

『やっぱり、森に逃げる…っ！？』

　【インセクト・キング】の赤く光った両腕から伸びた鉤爪が私の首を狙い、一周させた。

　……周囲の木々が全て斬られてしまった。

『とっさに、しゃがまなかったら首が飛んでいたわね……（どうしよう？）。

　逃げ場がないなら正面から行くまでだっ！』

　勝つ道筋を立てていない。だが、【イノセクト・キング】に接近する！

　ただ、次にあの斬撃を避ける確信が無いのと、近距離では斬撃が飛んでくることはないと予測しただけである。

『MP回復薬×5！【神威（かむい）】！』

『とりあえず、こ（・）れ（・）を使うか』

　MPを回復した後、ヨミは倒れていった大木（たいぼく）を【神威】の補正をもって抱える。

『ギャ…？ギィィィ』

　突然のヨミの行動に【インセクト・キング】は一瞬だけ戸惑（とまど）ったが、大木を抱（かか）えるヨミを見て迎撃（げいげき）体勢を取る。

『せいっ』

ーーー大木を【インセクト・キング】に向かって、やり投げのように投げる。

ーーー【インセクト・キング】は投げられた大木を余裕を持って避ける。

『そうだよねぇ…(´･ω･｀)』

『あっ』

　不意に何かに閃（ひらめ）いたヨミが、今度は大木を抱えって突っ込む！

　【インセクト・キング】は近づく大木を先端から斬っていくが、ヨミは途中まで突っ込むとすぐに放り捨てて、新しい大木で突っ込むことを繰り返し始めた。

　【インセクト・キング】は万策（ばんさく）尽きたかと思い、

『ギャギャッッ』

と嘲笑（あざわら）うように鳴いた。

ーーーだが、ヨミは、大木を使って攻撃しようとしたわ（・）け（・）じ（・）ゃ（・）な（・）か（・）っ（・）た（・）。

　それを6回繰り返した後、持っていた大木を横に振るう！

『ギッ！ギャジャァァ！』

　不意を突いた攻撃だが、【インセクト・キング】は難（なん）なく鉤爪で斬る。

……この時、【インセクト・キング】はヨミを見失っていた。

『せいっ！せいっ！……（略）、せ～いっ！』

　ヨミは【神速】によって距離を取っていた。

　ヨミは先ほどの攻防（こうぼう）で先端が斜めに斬られた大木を、次々に【インセクト・キング】の周りを大きく囲むように地（・）面（・）に（・）刺して回る！

『ギッ？』

　【インセクト・キング】はプレイヤーの回避、攻撃、防御、それに準（じゅん）ずる行動に対して戦闘用AIが対応し、戦闘の度（たび）に成長してさえいるが、今のヨミの行動の意図（いと）が分からなかったので、ただただ、対象の行動を観察して周り続けるしかなかった。

『これが、最後（ラスト）』

ーーーだが、【インセクト・キング】は忘れていた。

　ヨミが最初にまともなダメージを与えた時の手段を…！

『とりゃぁぁあ！』

　私は最後に残った大木を抱えたまま、地面に刺した大木の上を走る。

　大木の頂点で跳び、抱えた大木を地面に棒高跳びのようにめり込まし、全身のバネを使ってさらに高く跳ぶ！

『【星（・）落（・）と（・）し（・）】！！！』

　そして、2度目の【星落とし】を【インセクト・キング】に落とす！！

……これは、【神速】のスピード、【神威】のパワー、【ヨミ】の戦闘センスがなければ使えない荒技だろう。

　目の前で起きた予想外の行動に驚く【インセクト・キング】が鉤爪でヨミの胴体を狙うが、ヨミは胴体だけを囲むサイズの【アイギス】を5枚展開させ、胴をひねって鉤爪を障壁に滑らせた。

　そして、【インセクト・キング】の顔に【星落とし】をぶち込むのだった。

『グギャアアアアアア！！！』

『爆散！』

　ダメージエフェクトが混じる爆風に巻き込まれながらも地面に着地したヨミが【インセクト・キング】を見てみると、そこには顔の半分と左腕が爆散した【インセクト・キング】の姿があった。

　HPは2割までに減っている。

『しぶといーーーぁ、【神気解放】が切れた！』

『ギッ…ギ…ギャァァアア！』

『えっ』

　顔がボロボロの【インセクト・キング】が鳴くと、真っ黒な鎧のような身体に赤いひびが広がり、ひびから赤いオーラが漏れ出し始める。

≪蟲毒（こどく）を束（たば）ねる王≫

【インセクト・キング】LV.45

≪決（・）戦（・）状（・）態（・）≫

　……残りのHPが1割になったけど、レ（・）ベ（・）ル（・）が（・）1（・）0（・）上（・）が（・）っ（・）た（・）わね。

　あははっ、勝たせる気ある？運営。

………………

…………

……

ーーー私は必死に逃（・）げ（・）て（・）い（・）た（・）。

　【インセクト・キング】は斬撃を飛ばすのをやめて、圧倒的なレベル差での接近戦のスタイルに切り替えたからだ。

　今までは良くも悪くも、距離があるから避けていられた。でも、今は常に【アイギス】（拳）を中型で複数展開して、割れる瞬間に軌道（きどう）を予測して避けるしかない。

『裁き……を受け…【回避】！』

『詠唱が長い、よーーー【神速】！』

　周りに刺した大木も、まるで紙切れのように斬られているけど、地面に残っているから距離を稼（かせ）ぐのに役には立っている。

　……それに、あのアリが飛ばずに直線的に動くから、すんでのとこで避けられて…る。

　≪決戦状態≫になったせいか、怪我が治っていないのも幸（さいわ）いしてるわね！

『でも、どうにか、しない…と、ねっ！』

　私はアイテム欄の一番後ろにあったアイテムを出す。それを左手で掴（つか）み、迫ってくる鉤爪の前に突き出した！

ーーーそのアイテムは見事に鉤爪を防ぐどころか、その刃を欠（・）け（・）さ（・）せ（・）る（・）！

『虎（・）の（・）子（・）を出したんだから、絶対にあなたを倒す！【神威】【アッパー】【乱打】！【背負い投げ】！』

　打撃スキルの衝撃で少し浮く【インセクト・キング】の右腕を取り、【背負い投げ】をしようとするが、【インセクト・キング】は羽根を展開して飛び、無理やり私の腕から外れる。

　今が決（・）着（・）の時！逃（のが）せば負ける！

　素早くMP回復薬を飲み込み、MPを回復する！

　そして詠唱を始める！

『裁きを受けよ！汝（なんじ）に雷（いかずち）を！我に勝利を！』

狙いを定（さだ）めるために振り向いた私を詠唱中に殺そうと【インセクト・キング】が降下していた！

ーーー私のほうが早い！！！

『【裁きの千雷】！！！！！』

『【アイギス】マキシマム・拡大展開！！』

　一瞬でいい。耐（た）えてよ、【アイギス】。

ーーー私は、【裁きの千雷】と【アイギス】で【イノセクト・キング】を挟（はさ）むために広く展開しているため、急激に減っていくMPを見ずに間髪（かんぱつ）入れず、MP回復薬を飲むっ！

　そして、遂（つい）に【イノセクト・キング】のHPが0になり、ヨミはMPを1%だけ残して耐（・）え（・）切（・）っ（・）た（・）。

ぴこん♪

≪ワールドアナウンス :

　プレイヤー【ヨミ】が初めて、

　ネームドモンスター

　≪蟲毒を束ねる王≫

　【インセクト・キング】を倒しました≫

≪これより、

　【始まりの大地】のネームドの出現確率が上がり、【インセクト・キング】が弱体化されます≫