第2話

 彼女の手を取り、その白く美しい手をはじめとして、彼女お気に入りのピンク色をした香り付きのボディクリームを体の隅々に塗っていく。じっくり時間をかけて体に塗りこんでいけば、石鹸のような香りがしてずっと抱きしめていたくなるようだ。

使い終わったボディクリームは、これまた彼女が気に入って育てていたアイビー(彼女は植物が好きで彼女の家にはいくつも観葉植物が置いてある。)の隣に化粧水などと一緒に並べ置く。正直、俺は無駄なものを家に置きたくない性分でこういうものは好きではないのだが、彼女のお気に入りだということで同棲するときにこれだけは持ってくることにした。

ゆったりとしたそんな時間が終われば、二人してベッドに入る。俺は彼女の体をゆるりと抱き寄せる。

「ああ、綺麗だよ。綺麗だ。」

首筋に舌を這わせれば、果物のような甘美な味。そのまま二人抱き合ったまま優しい微睡の末に眠りについた。


午前6時。彼女より先にベッドから出る。料理下手な彼女の代わりに俺が朝食を作る準備を始める。今日はスクランブルエッグと簡単なサラダ、俺お気に入りのパン屋で買ってきたちょっとお高めな食パンを焼く。ちなみに俺は2枚、彼女は1枚だ。

「頂きます。」

そう丁寧に言って、料理に口をつける。食パンの弾力のある食感に、思わず口角が上がる。向かいに座る彼女も朝食を起き抜けのぼんやりとした目つきで見つめている。そんな姿すら俺にとってはまた愛らしい。彼女はこのことをひどく気にするけど、女性だから料理しないといけないなんてことないんだから、俺が彼女のためにできることなんてこのくらいしかないから、何ならちょっとうれしいまであるんだ。

朝が弱い彼女は少量の朝食を口にした後、ソファに軽く横になった。そんないつもの光景をほほえましく眺めつつ、仕事に行く準備を完了させる。

「行ってくるよ。」

ソファで眠っている彼女に一声声をかけ、白い陶器のような綺麗な額に軽く唇を寄せる。布団に隠された彼女のかわいらしい唇が少しだけ微笑んだような気がした。



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