第29話「やりこみ都市伝説~昭和オカルト特集〈あるロックシンガーの死を巡る一大オカルト論争篇〉」
《「やりこみ都市伝説」は、日本や世界のさまざまな都市伝説を紹介する番組である。
今回は、「昭和オカルト特集」と題し、ナビゲーターに月刊ムーアの元編集長・佐々木氏をお迎えして話を伺っていく。》
※月刊ムーア:創刊以来 日本の精神世界やオカルトブームをリードし続ける情報誌である。
佐々木氏 今回紹介する都市伝説は、世界的なロックシンガー、サンダー・リリーを巡る都市伝説です。
サンダー・リリーは、イギリスのロックバンド「
一番売れた楽曲「
若い人でバンド名や曲名を知らない人でも、一度は聴いたことがある人がほとんどじゃないでしょうか?
そんな
この写真は、イギリス北西部の都市シェルフィールドでの野外ライブのものなんですが、サンダー・リリーが当時ライバル関係にあった「
この日、
……そして この日は、サンダー・リリーが亡くなった日でもあるのです。
リリーの死因はドラッグ中毒。これはファンの間では知られていることですし、当時は日本でもだいぶ騒がれてましたが、サンダー・リリーって結構破天荒で、ドラッグの使用を公言したりもしてて、実際にバンドの活動期間中に二回、当局に逮捕もされてるんですよね。
まあ、そんな型破りな生き方や過激な発言もファンを魅了していた部分ではあるんですが、結局、最後は、そのドラッグが原因で亡くなってしまいました。
彼女が発見されたのはロンドン郊外にある自宅で、そこは
《三十五歳という若さでこの世を去ったサンダー・リリー。彼女は、その歌声と生き様で多くのファンを魅了した。しかし 彼女の死は、やがて更に多くの人々を巻き込む一大論争へと発展していくことになる。》
佐々木氏 サプライズ出演当日の死はショッキングに報じられましたが、報道によって彼女の死の詳細が伝えられると、それは更に過熱していきます。なぜなら、ある憶測が飛び交うようになるからです。それが──
《 サンダー・リリー幽霊出演説 》
佐々木氏 報道された彼女の死亡推定時刻は、当日24日の午後四時前後でした。
これっておかしいんですよ。なぜなら ライブ会場のシェルフィールドからロンドンまで、現代の交通機関を使っても三時間はかかります。
野外ライブにサンダー・リリーが登場したのが午後二時くらい。どんなに急いでも、死亡時刻にロンドンに戻ることは不可能なんです。
ライブ会場で撮られたこの三枚の写真は、当時から紙面をにぎわせました。と言うのも、ほら、写真のここ!よく見て?薄っすらとだけど、背景が透けてるように見えませんか?
こういうことが重なって、それで広まったのが、ライブに表れたのは彼女の幽霊なのではないかという説です。
一方で、これはチープな合成写真だと断じる専門家もいました。
写真を見て違和感を覚えた人もいるかもしれませんが、彼女の視線ってどことも合ってないと思いませんか?定まってないって言うか。ずれているって言うか。それと、身体がステージから浮いた感じもしますよね。
視線についてはドラッグの影響って言う意見もありましたが、これらの写真の違和感から、いわゆるフェイクだとする意見もあったんです。
ですが
このショッキングな出来事は、彼女の死後、幽霊出演説の賛否とともに大きくなり、やがてロック界を巻き込む一大オカルト論争へと発展するのです。
当時、日本のテレビでも何回か特集が組まれて、取材班がイギリスまで飛んだりしてたよね?僕ら月刊ムーアでも幾度となく取り上げたなぁ。
《当時
実は
佐々木氏 彼女は、サンダー・リリーという名前の通り、エネルギーに溢れ、短いけれど激しく光り輝く人生を駆け抜けていった。その最期に、親友のジェミーに別れを告げて天に召された。これが都市伝説の締めくくりとして、美談っぽくもあり、落としどころとなって、論争は下火になっていきました。
しかしです!ここ最近、それとはまったく異なる説が浮上してきたのをご存知ですか?それが──
《 パラレルワールド混線説 》
《パラレルワールドとは、ある時点から分岐してできた別の世界のことで、並行世界や並行宇宙などと呼ばれている。》
佐々木氏 まず、この写真を見てください。
これは、リリーが亡くなった1987年の春に撮影された
当時からサンダー・リリーは細身でしたが、亡くなる直前は、薬物の影響もあったんでしょうか?結構やせていました。
で、野外ライブの写真に戻ってほしいんですけど……どう?
確かにリリーなんだけど、顔もふっくらしてて、ワンピースから見えてる腕も、ジャケット写真よりも肉づきがよく見えませんか?
それから、彼女が着ている花柄のワンピース。これ、おかしいんです。バンドでのリリーの写真は、どれも奇抜なファッションじゃないですか?そのファッションセンスも、当時から注目されてたんですけど、彼女の友人や知人の証言では、彼女は普段もそんなファッションで、花柄のワンピースなんて彼女の趣味ではないらしいんですね。
少なくとも、野外ライブという多くの人の眼に触れる場所に出るわけで、それなのに、サンダー・リリーらしくない花柄ワンピなんて絶対にありえないというのが、彼女を知る多くの人の意見です。
実際に亡くなった時の服装とも違っており、彼女の衣装にこんなワンピースはなかったらしいです。
このように詳しく調べるとおかしな点がいくつも出て来て、そこで浮上してきたのが「パラレルワールドの混線説」なのです。
つまりこの写真に写っているのは、別次元のサンダー・リリーなんじゃないかということです。もしかしたら、その次元では、彼女はドラッグにも染まらずに、フェミニンなファッションが好きな健康的な女性だったのかもしれません。
……ライブ会場で撮られたリリーの写真はこの三枚だけです。
覚えていますか?否定派がフェイクだと言っていた根拠を。彼女の視線が定まっていない点。身体がどこか浮いた感じがする点。そして透けているように見える点。
そして服装や体型の違い。
これらを総合すると、やはり一時的に、いま僕らがいるこの世界とは別次元が、あの日あの場所あの時間に、重なり合い交わったのかもしれません。
パラレルワールドについては、まだ証明されていないのも事実です。しかし 物理学の分野で多世界解釈の研究もされており、証明はされていないが非現実でも虚構でもない れっきとした研究分野なのです。
もしかしたら、この昭和オカルト史に残る都市伝説は、エネルギーに溢れるサンダー・リリーが、死の間際に親友に会いたいと強く願ったことで、彼女の思念が、別次元のリリーに作用して、あのような現象を起こしたのかもしれません。
────信じるか信じないかは、あなた次第です!
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