第26話「白T考~白いTシャツ好きの僕の独白」

 こんにちは。僕の名前は、白野シロ。白野さんちで飼われてる犬じゃないよ?26歳・会社員・成人男性です。

 と、自虐ネタは このくらいにして、今度は みんなのことも聞きたいな?


 あ、そうだ!話は変わるんだけどさ、みんなはTシャツ、好き?

 ……うん。好きでも嫌いでもないって人もいるね。けど一年で一度もそでを通さないなんて人、いないよね?


 そうだな……。それじゃあ今日は、僕にとっての究極のオシャレ──白いTシャツへの こだわりを聞いてもらおうかな?



 白T考しろティーこう──これは、白いTシャツ(略して白T)の哲学についての僕の独白どくはく



 僕はTシャツが大好きなんだけど、特に、白Tには すごくこだわりがあるんだ。

 白Tは、自分にとってオシャレの基本であり、自分自身を映し出す鏡のようなものだと思う。


 例えるなら、うどん屋さんの腕が、麺とだし汁のみで作られる「素うどん(関東でいう)」で測られるようなもの。バーテンダーの力量が、シンプルな材料で構成される「ジントニック」で試されるようなものなんだ。少ない材料で作られるからこそ、ごまかしは利かない。


 白Tも同じなんだ。色柄のない無地の白Tっていうのは、着ているその人の本性を映し出し、その人のファッションセンスが試されるんだ。そして、シンプルだからこそ、その人の個性も出てくる。そう思ってる。


 数多あまたある白Tから、君は どんなものを選ぶんだろ?明確なヴィジョンはある?哲学は──?


 想像してみて?

 落ち着いた白T、シックな白T、ガーリーな白T、カッコいい白T、無難ぶなんな白T、ダサい白T……。(今ダサいって言ったけど、それは自分にとってであって、また別の人が着れば似合うかもしれないから奥が深い)


 あ、そうそう!最初に、白Tとは何かってのを定義しないといけないよね。


 そうだな。例えば、いま僕が着ているこの白T。左腕のそでにサテン生地の黒いタグが付いているでしょ?これって白T?白Tじゃない?


 ……自分で着てて なんなんだけどさ。僕にとって こういうワンポイントがついているのは、邪道なんだ。

 または、単純な白ではないものもね。例えば別の生地を組み合わせて立体的な模様もようほどこしてあるものとか、同じ白でも色身の違う白でストライプが入っているものとかね。そういうのも邪道だと思ってる。


 ま、そう言うのも好きだけどね(てか結構大好きだけどね)。でも本物の白Tではないんだ。あくまでも無地の白Tが、真の白Tさ。シン・白Tさ。押し付けるつもりはないけど、でも僕のゆずれない哲学なんだ。


 ここ最近、僕は新しいオシャレな(シン・)白Tに巡り合いたくて毎週末いろんなお店に出かけたりネット通販を見まくったりしてるんだけど、これといった出会いがなくて、とうとう9月になってしまった。夏が終わってしまったよ……。


 いま持っている白Tは、二年くらい前に買ったもの。学生時代と比べて、白Tをヘビロテすることも少なくなったけど、そろそろ手放すときが来たんだ。


 ここで、みんなに残念なお知らせがあります。

 当たり前なんだけど、どんなに美しくて着心地が良くて気に入っている白Tでも、いつかは別れの日が来るってこと。

 たとえどんなに気を付けて陰干しで太陽光による劣化を防いだとしても、少しずつ黄ばんでく。また白Tってのは、繊細せんさいでナイーヴな生き物なんだ。醤油やカレーの飛び跳ね、ラーメンのシミ……。色柄ものならば ほとんどダメージにならないものが致命的なダメージとなってしまう。


 けどね。

 せっかくのオシャレな白Tを黄ばんでも汚れても着つづけるのは、僕に言わせれば白Tへの冒涜ぼうとくなんだ。そして何より自分自身を冒涜することなんだ。自傷行為みたいなものさ。

 愛着があるのならば なおさら、美しく白いままで手放してあげるべきなんだ。いつまでも過去に執着してはならない。そう思ってる。


 みんなも、勇気を胸に、新しい白Tとの出会いを求めて、大海原へ乗り出してみない?

 白Tを見つける航海は厳しいよ。荒波の果てに辿り着いた先に、の一着が見つかるとは限らない。


 ──もうめるか?このくらいで手を打つか?いや、まだだ。まだ世界には自分に似合う白Tが存在していて、僕のことを待っているはずだ。


 そう信じて航海を続けるか?そんな判断が試される苦難の旅でもあるんだ。


 さあ、今週末。みんなも自分に似合うオシャレな白Tを探す旅に出てみない?

みんなに出会えることを楽しみに、僕は今日も、ユニクロで君たちを待っている。

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