幕間~文四郎後日談~
第39話 はじめてのききとりちょうさ
「古里左衛門蔵人、お呼びと伺い、まかり越しました。」
「入り給え。」
扉の外から、入って来た声に応える親紅。
「失礼致します。」
執務室の扉をくぐる古里。礼儀正しく扉を閉める事も忘れない。
「かけ給え。」
椅子を勧める親紅。
「はっ。」
言葉少なく、最小限の所作で、毛足の長い絨毯に乗せられた椅子に、腰かける古里。
「早速だが、本題に入ろう。君が、『斡旋』した『婿養子縁組』についてだ。」
「……確かに、『養子縁組』の『斡旋』や『仲介』は、上様から賜りました私の『職務』でございます。が、1件毎の詳細内容には、即答しかねます。若君。」
「では、魔鬼家の婿養子の口利きをした件についてだ。覚えていないようなので、こちらから説明しよう。時期は、約7年前だ。当時、騎士学校を首席で卒業した生徒がいた。」
古里に書類を見せる親紅。
「彼が、そうだ。猪鹿村出身の農民でありながら主席卒業をした逸材だった。その彼が、魔鬼家の婿養子入りした。だが、それは本人の望む所では無かった。」
「それの何が、問題なのでしょう。農民であれば、姓も無い訳です。格式に見合う名前に変える事は、『格』を上げる事に相違ございません。」
「古里、私は、その様な『常識論』を説いている訳ではない。ここから先は、『個別』の話だ。時に、君の母君は、魔鬼家先代の妹だったな。」
「……確かに、その通りです。父上は、武勇に秀でた者を基準に、その家の娘を『妾』にしておりました。その1例が、魔鬼家でございました。それが、何か。」
「しかも、当時魔鬼家のご令嬢は、39歳。嫁ぎ先で、『子供ができない』事を理由に、2度も『離婚』させられていた。その魔鬼家との『婿養子縁組』についてだ。」
「申し訳ございません。やはり、1件毎の詳細内容には、即答しかねます。若君。」
「だから、私が、説明してやる。そう言っている。で、君は魔鬼家からの依頼に基づき、彼が望まない『婿養子縁組』を『強制』した。」
「お待ち下さい。誤解をなさっておいでです。それは、あくまで『斡旋』の職務に基づいた物。その『望まない』事も全くあずかり知らぬ事、一体何が問題なのでしょう。」
「実は、今回彼が『武勲』を立てた。その功績に見合う『名前』と『禄高』に、上げるつもりだ。それに当たって、魔鬼家令嬢との『離婚』を前提としたい。」
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