第22話 はじめてのじゃくにくきょうしょく

「よくぞここまで来た。褒めて使わす。」

 ……………………いや、俺こんなこと言わないし。

 ここは、洞窟の最深部。

 とーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっても、広い空間が広がっている。

 そして、その中心に、鎮座ましましているのが、件の『龍族』だ。

 特徴、砂色をしている。翼が無い。四足獣。そんな感じだ。

「そりゃ、確かに『振動感知』は、すげぇや。何しろ、地に足を付けているなら、必ずあるのが、足音だ。この『振動』を『感知』する『能力』で、侵入者の位置を特定迎撃していた。」

 つまり、『影化』した時点で、『龍族』が、配置した『粘泥異人』は、俺の事を見失うって寸法だ。

「ほぉ……我が、『粘泥異人』に付与した『能力』を、そこまでつぶさに、察したのは、その方が初めてだ。……参考までに、名を聞いておこう。」

「そりゃ、アレか。墓に刻む名前って奴か。」

「その方、何か誤解しておる。」

「へぇ、何だ、そりゃ。」

「んむ。その方、我が配下となれ。さすれば、世界の半分をくれてやろう。」

「おい! ドラゴンが、その台詞って、何のパクリだよ!」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「よいか、その方、物の本質を察する力も、その裏をかく力もある。我の力と併せれば、千人万人力たるや相違ない。故にその方に、半分やろう。どうした。返答や如何に。」

「その前に、聞きたい事が、1つある。」

「……ほぉ、我に質問とは……その意気やよし! 聞くがよい。」

「何故、橋を壊した?」

「……橋? ああ、あの石造りの渡し板か。……勘違いするでない。我は、あのような物、作る許可を下しておらぬ。」

「はぁ? そりゃおかしいだろ。お前の許可がいる。あれは、人間が、人間の土地に、人間の為に、作ったもんだ。」

「違う! それは、間違っている!」

 『龍王』の「違うな。人間と言う劣等種族は、『龍族』と言う高等種族に、臣従すべきなのだ。」は、「違う! それは、間違っている!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某黒の騎士団とも無関係に相違ない。

「焼肉定食。」

 龍一の「それは、『弱肉強食』と言って、自然界と野生動物の法則に過ぎない。」は、「焼肉定食。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 カロリー不足とも無関係に相違ない。

「ふん! 本来なら、人間の側から、貢物を持参して、挨拶に来るのが、当然、必然、瞭然である! そんな初歩も弁えておらぬから、警告したまでの事。」

「漫画で読んだ事がある。

確か、東南アジアで、アウトローな運送業を営むチームの話で、ある家政婦の台詞だ。

『生かしておく理由が、無くなりました。』

だったな。おまえの最大の間違いは、自分を食物連鎖の頂点だと妄想し、他人を踏みにじる『権利』があるとも妄想した事だ。」

「おのれぇ……いわせておけば……お前の様な、貧弱な人間如き、何ができる! 我を殺すなどありえぬぅぅぅ!」

「『へ、ん、しーん。』…………とぉっ!」

「むむむむぅっ! その気配! まさか! お前は!」

「さっき言ったな。『より強い者は、より弱い者を、どの様にしてもよい。』その台詞。そっくりそのまま返す!」


 * * * 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る