第20話 はじめてのおんみょうじゅつ
「漫画で読んだ事がある。
確か、科学漫画読本だ。
『繊維を加工し、毛先を0.02ミリメートルにしたもので作られている。それが歯ブラシだ。』
だったな。」
馬久兵衛さんが、買ってくれた歯ブラシは、驚嘆の出来栄えだった。100円ショップで、売られているものより、出来がよかった。そう思えたくらいだ。
馬久兵衛さん曰く
「カミガヤツリの繊維は、とても細く丈夫なので、加工して使っています。ちなみに、加工には複数の魔法が必要ですが、王国の計らいで、庶民でも買える値段に、抑えられています。」
ちなみに、猪鹿村では、濡らした指に、塩と村近郊で採れた薬草を混ぜた物をつけて、ゴシゴシやってた。カラくて苦かった。
宿屋で使った歯磨き粉も、塩にミントを混ぜた物らしい。後味は、某緑色のガムみたいに、スーッとするんだ。
あとは、お馴染み、糸ようじ。そう言った物で、オーラルケアをしていた。
遅めの夕食後、お口のエチケットを済ませた後、ようやく馬久兵衛さんと、彼の使用人達が、宿に戻って来た。
取り調べで、疲れていたらしいので、軽く挨拶した。で、布団に入った。お休み……
…………………………………………………………暫しの後、ようやく、全員が、寝静まった。
”何をしておるか! さっさと出発ぢゃ!”
毎度おなじみ『影化』『保護色』の『コンボ』を使って、部屋を抜け出す。
川沿いの道に街路樹がある。周囲に人間がいない事を確認。よし、月光をバックに木陰で、『コンボ』を解除。
「『ハーレーダビッドソン』。」
『ピカッ! ピコピコピコン』
”また、音が聞こえた様な気がするのぉ。”
【きっと、気のせいだ。】
「あら、音が聞こえましたわ。」
無言で、『ハーレー』に乗る俺。
「ちょっとぉ、無視しないでくださるぅ。」
確認しなくとも分かる。さっきと同じだ。何故か、何時の間にか、登場している。
すねたような声を出す女……美理亜は、さっきと同じ服装だった。
「俺は、用なんてない。」
「あら、そう言う事なら、仕方ないわぁ。あなたの同室の人、銀髪のもみあげの行商人さん、起こして教えてあげよっかなぁ。」
「勘違いするな。俺は、用なんてない。お前の用件は、手短にしろ。」
「『龍族』退治に行くんでしょ。手伝うわよ。」
「……………………」
「あら、あなた、さっき宿屋の1階の酒場で、聞き込みしてたでしょ。『龍族』の住処。だから、分かったの。あなた、これから乗り込んで、退治するって。」
「さっき、『手伝う』って言ったな。」
「ええ。」
「勘違いするな。俺は、頼んでない。望んでない、願ってない。お前が、勝手についてくるだけだ。お前は、自己責任でついて来るんだ。いいな。」
「随分な言いようね。」
『ハーレー』を、無言で走らせる俺。
「ちょっ! ちょとぉ! ……『火行を以て大梟を呼ぶ』破ァッ!」
すると、美理亜の目の前に『大梟』が、出現する。ちなみに、『大梟』は、両翼を広げると、10メートルに達する。『大梟』に乗る美理亜。
「あいつを追いかけて。」
美理亜の指示に、『大梟』は、一声嘶くと、飛び立つ。そして、『ハーレー』に乗る俺を見下ろしながら追いかける。
その一部始終を、バックミラーで、確認した俺。
【あれが、魔法……陰陽術か。】
”左様、鳥は、火行に属する故、火行の術で、召喚使役すると言う所ぢゃ。しかし、あれ程の『大梟』を、ああも容易く召喚使役するとはのぉ。”
【達人級か。】
”然り。”
【面倒な奴だ。だが、何か妙だ。】
”妙ぢゃと?”
【分からねぇ。だが、俺の直感には視えるんだ。何か妙だ。】
”その結論、さっさと出すがよい。”
【あたぼうよ。】
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