第14話 はじめてのいせかいじゅぎょう、さん

「なーるほど、神話の時代から、『天虹王国』を経て現在に至る訳か。」

「はい、初代の国王陛下が、『天叢雲剣』をお持ちの『現人神』であり、剣と称号は、代々受け継がれ、現国王陛下は、『天虹善鷹(てんこう・よしたか)』様、3代目です。」

「え? 国の興りが、500年前って、初代、2代って、長生きし過ぎじゃねぇの。」

「はい。何しろ『現人神』ですから。初代『天虹剣義』様は、200年、2代『天虹善国(てんこう・よしくに)』様は、300年、『天虹善鷹』様は、在位10年目です。」

【おいおい……マジかよ。】

”無論、真実ぢゃ。『神通力』がある故、それくらい生きるなど造作もなし。”

「すげぇ……。あ、そだ。魔法の事も聞かせてくんない。」

「はい。私は、もみあげの銀髪と黒目が銀色である事から分かる通り、金行の魔法の素質を持っています。とは言え、銀髪の量から分かりますが、大したものではありません。」

「そーなの。」

「はい。上級の術には、非金属を金に変える夢の様な術もあるそうです。が、その様な術者に、お目にかかる事は、あり得ません。」

「何で?」

「それは、違法だからです。そして、術者は、王宮に幽閉され、死ぬまで金に変える術を使い続ける事を、強制されるそうです。」

「この国の暗部を見た気がするぜ。」

「ご安心を。そもそも習得を許されておりません。その様な前時代的な習慣も過去の話です。」

「そっかー。ん? そーいや、馬久兵衛さんが、使える魔法って何?」

「私にできる事は、金属の成分分析程度です。」

「それって、貨幣の純度を調べるって事かい?」

「はい。おかげ様で食うに困りません。が、1年の修行の成果で黒髪は、全て抜け落ちました。ですから、あまり熱心に修行しない者も多いのです。」

「そーなんだ。」

「念の為ですが、髪を染める行為と、かつらを着用する事は、魔法の素質査証として法に触れる事があります。例外は、黒髪のかつらくらいですね。ご注意下さい。」

「はーい。」

「では、最後に、宗教でまとめたいと思います。」

「いいぜ。」

「元々、この世界をお創りになられた神、造物主を崇める物でした。そして、神の言葉を人間に代弁する者、神官がおかれました。時代と共に彼らは、神に等しい敬意を集めていきます。」

「ほう。」

「それが当時、人々の崇拝対象に、お布施として財を、差し出す行為は、定着していました。が、これが、エスカレートしていくのです。」

「どんな風に?」

「遂に、自分が開墾した土地までも、お布施として差し出してしまったのです。」

「漫画で読んだ事がある。

確か、自分の人生を満月に例えた男の話だ。

『自分で、開墾した土地を、有力貴族や、寺社に差し出すと、国の税金が、かからない上に、税も安く済む。これを寄進と言う。』

だったな。」

「おや、何か?」

「それじゃ、領主達は、困ったんじゃないのか。税を取れないだろう。」

「その通りです。この、『寄進』と言う行為は、領主の反発を招き、神殿の焼き討ち等、凄惨な事件にも発展しました。」

「何処の第六天魔王だ。極端すぎるだろ!」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「何処の世紀末覇王伝説だ。」

 主人公の「完全に、無法地帯だな。」は、「何処の世紀末覇王伝説だ。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某『我が人生に一片の悔い無し!』とも無関係に相違ない。

「しかし、今は国王陛下が、『現人神』。ご神体の役割を兼ね、国教を『天虹教』と名を改め、保護しております。」

「つまり、凄惨な事件も、領主と宗教との争いも、過去のもの。今は、そんな事は無いと言う訳だな。」

「はい。……では、最後に何か質問は、ございますか。」

 確かに、この人から聞き出せそうな、情報も無さそうだ。

「うんにゃ、特にない。」

 こうして、今日の授業は、終わった。


 * * * 


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