第13話 はじめてのいせかいじゅぎょう、に
「しかも、単に武勇を示すだけでは、ございませんでした。相争う者達の意見を全て聞き、落としどころのある沙汰を、決めていきました。」
「政治手腕もあったのか。」
「むしろ、巧でした。その為、周辺領主達が、続々と『天虹王国』に臣従を誓い、版図を拡大していきました。全ては、順調に進んでいる。かに見えました。」
「そうじゃなかったと。」
「はい。しかし、その反動で、反『天虹王国』の領主連合が、形成され、世界を二分する事となったのです。それは、天下分け目の大戦に発展しました。」
「おおいくさ、か。」
「はい。その時の戦は、戦場の地名を取って、『赤牙原戦争(せきがはらせんそう)』と呼んでおります。或いは、『赤牙原』ともです。」
「パクリ多過ぎだろ。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。
「勿論、『天虹王国』が、勝ったんだよね。」
「はい。『天虹王国』は、兵数劣勢でした。が、『天叢雲剣』で敵軍の陣形を崩すと、『反・天虹王国連合』は浮足立ち、『天虹王国』の猛攻の前に、総崩れになりました。」
「何だか、敵は、数が多いだけの、烏合の衆だったみたいだな。」
「はい。こうして、『天虹王国』の領主達は、大幅に加増され、逆に『反・天虹王国連合』は、減封(げんぽう)、改易(かいえき)されました。領地替えは双方にですね。」
「漫画で読んだ事がある。
確か、サルと呼ばれながらも、天下人にのし上がった男の話しだ。
『大名への対応は、信賞必罰だ。領地を増やす事を加増。領地を減らす事を減封、領地を没収する事を改易。』
だったな。」
「こうして、天下統一されました。以降、人間同士の争いは、ありません、夜盗山賊の類も、めっきり姿を消しました。が、それでも人間は、武装を止める事が出来ません。」
「へぇ、何故だい?」
「『魔族』と『龍族』です。連中が、凶暴なせいで、被害が大きいのです。件数は左程でもありませんが、一件の被害が大きいのです。『三村青爵領』の中でも、目撃例があります。」
「そんなら、ついでに『魔族』と『龍族』の事も聞こうか。」
「では、私の知る『神話』について語りましょう。」
「おお、待ってました。」
「かつて、世界は3つに割れていました。1つ、『魔族』と彼らの造物主、2つ、『龍族』と彼らの造物主、3つ、我ら人間と造物主です。」
「おおぉ……。」
よしよし……これで、『焼き付けられた記憶』との照合もできるな。……
「彼らは。三つ巴の闘いをしていましたが、『魔族』の造物主、『龍族』の造物主が、相次いで倒れた為、『龍族』は殺処分、『魔族』は、『魔界』に追放処分となりました。」
「え? でも、『龍族』って目撃されてんじゃん。猪鹿村の近くに。」
「はい。現在我らが、遭遇する『龍族』は、全てかつての闘いの際に産み落とされた卵、ないしその二世なのです。」
「おいおい……それじゃ、造物主の手抜かりだとでも言うのかよ……。」
「いいえ、温情です。」
「そっかー、じゃ、折角かけてやった温情に、後脚で砂かけてんじゃねぇか。」
「その通りです。ですから、『龍族』の目撃情報は、すぐさま領主閣下の元へと、届けられます。そして、綿密な調査の後、大規模な討伐隊が、編成されるのです。」
「領主が、ヤルんだ。」
「はい。『龍族』が、いる場所、そこを治める領主の責任です。国王陛下の直轄領であれば、陛下の直属騎士団の出番です。」
「ふーん、じゃ、『魔族』は?」
「一部の『力ある者』以外は、『魔界』から出る事能わず。しかし、時折、こちらにやって来ては、悪さをしでかすそうです。幸いにして、私は出会った訳では、ありません。」
「そーなんだ。でさ、『魔族』と『龍族』ってどんな違いが、あんの?」
「そうですね。……『魔族』は、魔法に秀でています。『龍族』は、大きな身体と身体能力ですね。翼で、空を飛翔する事も特徴ですな。」
そして、人間は繁殖力による『数の暴力』か、『焼き付けられた記憶』とも矛盾は無い。
ちなみに、『魔族』の成人には、200年、『龍族』は、500年かかるそうだ。寿命も長いが、それ相応の時間がかかる訳だ。
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