第12話 はじめてのいせかいじゅぎょう、いち
葉が色づくには、未だ早い。壁の様な森を貫く馬車道--
馬久兵衛さんの馬車に揺られながら、借りた地図を見つめる俺。
ちなみに、馬久兵衛さんは、馬車の御者を、使用人に任せており、俺の隣にいる。
ここは、まだ時間もあるし、質問タイムといこう。
「馬久兵衛さん、村からも随分離れたし、そろそろ、いいだろう。話してくれよ。」
「……龍一様、そうですね。しかし、私、小学非才の身、分かり難い事は、話しの途中でも、質問して下さい。ひとまず、おさらいです。」
「はーい。」
「まず、お金の話から……白金貨1枚=金貨10枚=銀貨100枚=銅貨千枚=青銅貨1万枚となります。米1俵が、約金貨5枚ですね。変動相場にならない様に、国が管理しています。」
「ふんふん。」
猪鹿村で、見せて貰った米俵は、約50キログラム。ざっと、金貨1枚=1万円か……
「米の収穫量ですが、1株=1万石=10万斗=100万升=1千万合です。大体、成人男性が、年間1石の米を食べると考えると、分かり易いですね。ちなみに、1石=米3俵です。」
と、言う事は、1石=約180リットル=約150キログラムか……
「また、米1石を生産する土地面積を、1反と定めています。」
猪鹿村では、田んぼを、1反毎にあぜ道で区分けしていた。つまり、1反≒百平米か……
「次に、『天虹王国』の商業は、『商業免許』を持つ者の『特権』です。これは、人口1万人以上の『街』であれば、『商業免許』を持たない者が、商売をする事を禁止しています。」
「つーことは、馬久兵衛さんも『持ってる』訳だ。」
「はい。但し、私の『商業免許』は、『三村青爵領免許(みむら・せいしゃく・りょう・めんきょ)』となります。これは、『三村青爵領』の中では、自由に商売をしてよい。となります。」
「だから、『三村青爵領』の外で、商売できない訳だ。そう言えば、猪鹿村って『三村青爵』の領地なんだよな。」
「はい。『商業免許』の取得については、置いておいて、次に『爵位』・身分についてです。」
「ああ、いいぜ。」
「上から順番に、国王陛下、紫爵(ししゃく)、藍爵(あいしゃく)、青爵(せいしゃく)、緑爵(りしゃく)、黄爵(きしゃく)、橙爵(とうしゃく)、赤爵(せきしゃく)、平民の9段階となります。」
『天虹王国』……ここでも『虹』か……
漫画で読んだ事がある。
確か、高校の絵画系専門学級4コマだ。
『ヨーロッパ人は、ニュートンが提唱するまで、虹は6色と解釈していた。』
つまり、この人達は、ヨーロッパ人じゃない訳だ。
「そこで、誠に申し訳ございませんが、龍一様を『王都』まで、お連れする事は、出来かねます。そこで、爵都で、伝手を頼って案内人を紹介させて頂きます。」
「申し訳ない、って訳ないぞ。むしろ、馬久兵衛さん以外に、頼れる人がいないんだ。」
「恐縮です。では、この国の興りに、ついてです。」
「はーい。」
「約500年前、世界は群雄割拠、戦乱続きでした。人々も、領主も疲弊する一方でした。が、そこに、彗星の如く現れたのは、『剣義(つるぎ)』様と言う男……英雄です。」
「ほう?」
「『剣義』様は、『神より授けられし剣』……略して、『神剣』を携えていました。そして、唯一人、戦乱を終わらせるべく、『神剣』を振るっていました。」
【おいおい……それって……】
”無論ぢゃ。”
「ある日、ある国を大嵐が、襲いました。降り注ぐ豪雨、吹き荒ぶ暴風、荒れ狂う雷。大混乱の国に『剣義』様は、『神剣』を携えて現れました。」
「で、どうした。」
「『剣義』様は、『神剣』を一振り。只の一振りで、雲を薙ぎ払い、大嵐を跡形も無く鎮めてしまわれたのです。跡には、碧い空と1筋の虹があるのみだったそうです。」
【おいおい……マジかよ。】
”無論、真実ぢゃ。”
「この時、件の領主は、『剣義』様に大変感謝し、『是非とも私共の王になって下さい。』そう、頼みました。」
「えっ! で、どうなったの。」
「『剣義』様は、快諾され、自ら、『天虹剣義(てんこう・つるぎ)』と、名を改め、国の名を『天虹王国(てんこうおうこく)』と定められたのです。」
「そーだったのかぁ。」
「この時、『剣義』様は、天にかかる虹を指さして、言いました。『虹は、7色が、混ざる事なく1つ所にある。余も虹の様な国を作る。』だそうです。」
「国名にそんな意味が、あったんだ。」
「はい、龍一様。以降、『剣義』様が、携える『神剣』は、『天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)』と呼ばれ、『剣義』様は『現人神(あらひとがみ)』と、敬われる事になります。」
「『現人神』って、何時代混ぜてんだよ!」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。
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