第6話 はじめてのごはん
村長宅での食事は、豪華絢爛……ではなかった。が、手間をかけた美味しそうな品々だった。
「いただきます。」
ここでも、同じ挨拶なのに、少し感動。まずは、はしを付けるのは、豆ごはんだ。
「うめぇー。白いご飯と、枝豆の相性すげぇー。」
ん?みんな、ほっとした様な、面持ちだ。ま、いっか。ご飯美味しいし。
「龍一様、おかわりも、ありますから、どうぞ。遠慮なく仰って下さい。」
「うん。」
おっといけない、ご飯に感動して、忘れてた。村長の紹介は、こうだった。
今、声をかけたのは、村長夫人、たえ。隣に村長。村長の隣にいる男子は、村長の孫、かつ(8歳)。その隣に孫の妹、れい(6歳)。その隣に村長の息子の嫁、おせつ。
「時に、村長。息子は、今何処で何をしてるんだい。」
「はい、龍一様。倅は、爵都……領主様の居城で、騎士を務めております。」
「おっ! 百姓が、騎士になれるのかい。すげーな。」
「領主様は、『優秀な人材は、宝である。身分を問わず重用する。』主義のお方でございます。しかし、実際には狭き門ですが。」
「どんな試験かは、知らねぇーけど、村長の息子は、それを合格して、騎士になったんだろ。すげぇーじゃん!」
「ありがとうございます。龍一様。自慢の倅で、ございます。」
よし、これでおかずを一品ずつ味わえる。
「味噌汁の具は、小松菜。塩加減がいいねぇ。」
「胡瓜と、カブのぬか漬け。んーっ、塩味ほどほどで、よく漬かってるぅ。」
「焼きナスの味噌和え、みーんな、うまぁー。」
ん?ちょっと気なる事を、聞いとくか。
「そう言や、出汁は、何でとったの?」
「龍一様、干しシイタケです。」
答えてくれたのは、村長夫人。
「と、言う事は、猪鹿村では、シイタケ栽培やってんの?」
「いいえ、隆一様。それは、私が北の山まで行って買ってきたものです。なんでも、その方は、魔法で椎茸栽培を、可能にしたそうです。」
今度は、村長だ。
「へー、ほー、魔法ねー。」
では、メインディッシュに、とりかかろうか。その前に、豆ご飯のおかわりを……
「ひょっとして、こいつは、ウナギに味噌つけて焼いたのかい?」
「はい、龍一様。」
豆ご飯のおかわりを俺に、渡しながら答えてくれたのは、村長夫人。
「そのウナギは、本日かつが、川で獲ってきたものです。」
そう付け加えるのは、村長だ。
「う……はい、りゅういち様。」
かつ、元気いいな。
「にいちゃん、がんばったのぉ。」
妹も、がんばりアピールか、じゃ、報いてやらないと。
「そーなん。じゃ、かつ、お前にも食べてもらわなきゃ。」
俺は、箸を逆に、太い方で、ウナギを半身に切って、かつの皿に分けてやった。味噌もたっぷり付けてやる。
「龍一様、宜しいのですか!」
「かつが、獲って来たんだろ。なら、かつにも食べてもらわなきゃ。『自分で栽培した米を自分で食べられるのは、幸せ。』なんじゃないか。」
大人達は、熱くなる目頭を押さえているようだった。
かつは、ウナギの半身を、妹と半分こして食べていた。
「おぉぉーっ。ウナギと、焼いた味噌の香ばしさ、うめぇー。」
ウナギに舌鼓を打ちながら、次の話題を考える。
「じゃ、本題なんだけどよ。俺、王都に行きたいんだ。道、教えてくんない。」
大人達が、顔を見合わせる。
「そのぅ……龍一様。わしらは、猪鹿村から出た事が、ございませんで、案内もできません。が、『案内できる者』になら、心当たりが、ございます。」
「そーなんだ。じゃ、紹介して欲しいな。何者?」
「龍一様、その人物は、行商人の馬久兵衛さんです。数日後、ここに到着する予定です。その時に、わしから、話しを通します。」
「ウマクベね。村長が言うんなら安心だ。何から何まで世話になるな。ありがとう、村長。」
「いえいえ、龍一様。では、馬久兵衛さんが、到着するまで、ご逗留。と言う事でしょうか?」
「うん、そうだな。でも、暇だし、稲刈り手伝うよ。」
「めめめ、滅相もない。龍一様に、野良仕事など、とんでもない。むしろ、孫達の相手をして下さると、助かります。」
「うーん、そうだな。そうするよ。」
子供達の「やったー!」と言う元気な声が、唱和した。
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