第4話 伝説3

 渋谷。

「よし! もう少しで渋谷のスクランブル交差点だ! これで死んだ彼女が生き返る! 大好きな彼女に会えるんだ! アハッ!」

 彼氏はウイルスで死んだ彼女を生き返らせるためにありとあらゆる伝説に挑む。


 渋谷上空で彼氏を見守る彼女。

「カッコイイ! なんて素敵な彼氏なの! 私が一生かけてあなたを守り抜きます! かかってこい! 邪女! 私の彼氏には一歩たりとも近づかせないわよ!」

 幽霊彼女は周囲を警戒する。

「まさか!? この展開が永遠に続くのか!? 痛い! 痛すぎる! 傍で見守る立場の私はどうすればいいんだ!?」

 天使はラブコメ的展開に恐怖した。


「嘘の伝説に騙されてノコノコとやって来やがって。」

 悪霊が彼氏を渋谷で待ち構えていた。

「さあ、そのピュアな魂をいただくとするか。」

「待ちなさい!」

 そこに幽霊彼女が現れる。

「何者だ!?」

「私は彼の彼女よ! 私の彼氏に手は出させないわよ!」

 幽霊彼女は悪霊に宣戦布告する。

「俺の姿が見えるということは、おまえも幽霊だな。」

「そうよ。幽霊で何が悪い。」

 彼女も悪霊も死んじゃっている。

「よく見るとカワイイ顔をしている。」

「やったー! 私ってカワイイ! アハッ!」

 彼女は幽霊だが褒められると嬉しい。

「どうだい? 生きてる彼氏なんて忘れて、俺と楽しい幽霊恋愛しないか?」

 悪霊はナンパを始める。

「それは無理。できないわ。」

 しかし一途な幽霊彼女。

「なんで!? あんなアホな彼氏なんだぞ!? 浮気したって気づかないぞ!?」

「違うの。既に私の心も体も彼氏のものなの。純粋でアホな所がカワイイと思ったのに予想以上のアホだったの。でも、ここで彼氏と別れても、私自身が哀れな女になってしまう! だから別れられないのよ・・・・・・。」

「の、呪われてるぜ!」

 現実の彼氏彼女、その先の結婚も同じような心理描写で女性が諦めてズルズル付き合い、年老いた彼女や妻は、若い女が彼氏にできると捨てられるのがオチである。

「なんて可愛そうなんだ! 女の一生!」

 幽霊彼女に同情する悪霊。

「あなた悪霊のくせにいい奴ね。」

「よく言われるぜ。悪霊にむいてないってな。」

 意外にも悪霊はいい奴だった。

「すまないが、俺に何か必殺技でもぶち込んでくれ。」

「え?」

「そうしないと帰ったら邪女様に俺が殺されてしまうだ。」

 悪霊の大人の事情である。

「分かったわ。私に任せなさい!」

 幽霊彼女は悪霊を攻撃する決意をする。

「集え! 私の霊気!」

 左の拳に霊気を集中させる幽霊彼女。

「くらえ! 悪霊! これが私の霊魂の左アッパーだ!」

「ギャアアアアアアー!? 覚えてろよ!?」

 幽霊彼女は得意の左アッパーを悪霊に炸裂させる。

「決まった。」

 勝ち誇る幽霊彼女。

「ありがとう。悪霊さん。あなたのことは忘れないわ。」

 悪霊に感謝する幽霊彼女。


 渋谷。

「あれ? おかしいな。渋谷に来たら死んだ彼女が生き返るっていう伝説を聞いてきたのにな。何も起きないや。」

 伝説の彼氏はアホ・・・・・・いや、純粋な天然キャラだった。

「彼女に会いたいな。」

 たぶん彼女のことを愛してる。


渋谷の上空。

「私も会いたいよ!」

 たぶん彼女も彼氏のことを愛している。

「本当のことは二人にしか分からないのであった。」

 忘れた頃に天使が現れる。

「アアアアアー!? あんた! 天使の分際で悪霊が現れたら逃げたでしょ!」

「逃げてない!? 逃げてない!? 見守っていたのだ!?」

 天使は再び逃げ出す。

「こらー! 待てー! 逃がさないんだからね!」

 幽霊彼女の冒険はつづく。

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伝説の彼氏。それを見守る幽霊彼女 渋谷かな @yahoogle

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