代償による契約
彼は孤児だった。
親も居なければ兄弟すら居ない。
彼が生きていく為には、
盗みを働くしかなかった。
国柄そうなのだから仕方ない。
誰も助けてはくれない。
誰も守ってくれない。
ならば、強くなり、自らを自衛する他無かった。
彼は強くなり、学習した。
そうしてひとつの教訓を得た。
『他者への信用は自らを滅ぼす』
そう、彼は孤独を歩んだ。
仲間等おろか、作り方さえ分からなかった。
だが、彼にも唯一の拠りどころがあった。
それが、
"彼女達"
だった。
"彼らは裏切らない"
彼はそう宥める様に自らの心に言い聞かせていた。
まずは、一匹と。
時間が経つにつれて、
『家族』
は増えた。
「君はおじさん。
君はお姉さん。
君は妹かな?」
彼らも同様に、他人を好む者でも無かった。
意味嫌われ、捌け口の対象でしか無かったのだから。
ボロボロになった彼らは彼の優しさに触れる。
「ついに天から迎えに来たか、」
「あったかい、」
「一緒に居て下さい、、」
彼は優しく抱き締めた。
「はじめまして。
君にはお家はあるのかい?
良かったら、一緒に帰ろう。
僕にお家はないけど、
君たちが居てくれるなら
そこを家にしよう。」
彼らの家は彼の家になり、
彼の家は彼らの家になった。
「彼は食べ物は食べない。」
「何を食べているのだろう。」
「もしかして、好き嫌いがいっぱいとか。」
「彼は本を読んでいる。」
「彼は他には何が好きなんだろう。」
「彼の名前はなんて言うのだろうか。」
彼の知らない所で彼らは彼を想い、
彼らの知らない所で彼は彼らを想う。
「いつもこんなんで、飽きないのかな、」
「たまには違うのもいいのかな、」
「猫って、そもそもなに食うんだ、、」
彼と彼らには深い深い絆が結ばれた。
それはこの世界では愛と呼ぶのかも知れない。
彼らは各々大好きな彼にアプローチをする。
「おかえりなさい」
と言わんばかりの。
咽を鳴らし、足へとすり寄る。
「おかえりなさい。
おかえり。」
中には、食べ物を捕ってきたり、
何か物を見付けてきたり、
彼の好きな本を持って来る者まで、
彼らにとっては彼の温もりと、その優しさが、
一番の幸せだったのかもしれない。
彼は喜び、彼らの幸せに触れた。
彼もきっと幸せだったのかもしれない。
だから彼はそうなった。
ある時、彼の住む所に邪魔が入った。
彼はいつもの様に彼らを想う。
彼らは彼の居場所を守る。
「ここは、あの人と僕達の場所だ!!」
「帰れ!!!」
「ふざけるな!!」
「守れ!!」
だが、当たり前の様に、彼らには敵わなかった。
彼が戻る頃には、
彼らと彼との時間が訪れる事は
永遠に無くなってしまった。
彼は声にならない声で叫ぶ。
それと同時に、空爆が始まる。
彼は彼らを優しく抱える。
ボロボロの猫達は彼の大切な一冊の本を囲う。
彼の大好きだった本。
ただ、詠めもしない、絵の描いてある古い本。
「こんな本のせいで、、
君たちは、、
なんで、、」
彼の強く握る本は、眩い光を放つ。
「お前のせいで、こうなった。
お前が、お前がなければ、、」
「お前の望みは?
『血の代償』
により、
我とお前との契約が交わされた。」
「、、、、、
皆無くなっちまえ、、」
「了解した。」
彼と彼ら以外の
"皆"
は、一瞬にして消えた。
それから彼は深い眠りについた。
夢の中で彼は彼らと幸せにしている。
これは隠蔽された話。
彼が目覚めてしまったら、、
"私達は滅びるだろう"
追いやられ、追い込まれた男は世界を滅ぼす力を手に入れた 影神 @kagegami
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