追いやられ、追い込まれた男は世界を滅ぼす力を手に入れた

影神

出逢い

彼と出逢ったのはいつだろうか、、




最近のようにも思えるし、遠い昔からのようにも思える。




彼は優しかった。




とっても。




私を優しく撫で、優しく抱き締めてくれた。




彼はいつもお腹が鳴っていたが、


私たちの為のご飯を持っていてくれた。




私は彼が心配になって、ご飯を彼にあげた。




だが、彼は私に食べさせてくれた。






彼程の人間はそうは居なかった。






『私は本当は人間が嫌いだった。』






私は人を信用してはいない。




何故なら彼等は私を棄てたから。




私は飼われていた。




とても幸せだった。




自由で、気ままだった。






けれど、新しいのが来てからは煙たがられた。




ご飯も彼女の残りで、日に日にご飯も貰えなくなっていった。






そうして、私が弱り果てた頃、私は棄てられた。






いらなくなったのだ。






"代わりはいたから。"






私は彼女に言われた。




「あなたは私よりも劣っているからそうなるのよ。」




私も言った。




「あなたもそのうち劣り、私と同じようになる。」




と。






私は重い身体を引摺りながら彷徨った。




行く先も、目的も分からず。






私は罵られ、暴力を振るわれた。






「汚い。」






「あっち行け。」






私は何で生まれてきたのかと考えた。




こんなに意味嫌われ、私が何をしたのだと、




何故、私を愛してくれないのだと、、






足が動かなくなり、瞼が開かなくなった頃、私は温かくなった。






前に感じたようなあの感覚。






私を優しく撫でる手に涙が出る。






私はこうして欲しかった。






優しく抱きしめ、撫でて欲しかった。






「もう、嫌がったりしない。




きちんといい子にするから。






だからお願い。」






『一緒に居て下さい。』








どのくらい経ったか。




光が眩しかった。




私は天国にいるのだろうか。






すると、ざらざらとした生暖かいものが私を毛繕いする。




「いつまで寝てんだ。」




誰かに話しかけられている。




「誰?」




「誰って。誰だろうな。」




「天使さん?」




「天使って笑笑。おらはおらだ。」




「おら?」




「そうだ。」




「まだ眠いよ。」




「?もー朝だ。早く起きろ。」




「?」




私が目を開けると、沢山の猫が居た。




私は起き上がろうとするも出来なかった。




「大丈夫だ。皆あの人が連れてきた奴等だ。




何もしない。




お前はずっと寝ていた。




その間ずっとあの人はお前を撫でていた。




良かったな。拾われて。」




「拾われた?私が??」




私は視界が悪くなった。




「泣いてんのか笑。余程嫌な思いしたんだな。




大丈夫だ。俺らはもう家族だ。」




「家族?、」




「よろしく。」




「ニャー。」




「何処から来たの?」




「早く遊ぼう?」




「こっちおいで。」




沢山の声と、家族に囲まれた。






「ここは猫の王国?」




「違うよ、あの人の住み処。」




こうして私は彼の住み処で、


皆が"あの人"と呼ぶ家族との生活が始まった。










































































































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