アイテムのドロップ率
数日後、冒険者協会にはレベッカと少しはマシになった装備のハイトとガッチガチの装備にヘルムを被ったサーニャが居た。その場にいた全員が何事かとレベッカ達を見ていた。
「ちょっとレベッカ。何コレ」
ヘルムの目元の部分を上げてレベッカに文句を言う。
「大丈夫。それなら私が騙されても安全だから」
「まだ根に持ってるの?」
「ぜ〜んぜん……」
数日前の出来事でレベッカは全く元気が無くなっており、戦意喪失寸前だった。
「ずっとこの調子です、俺が聞くのはおかしいかもしれませんが大丈夫ですかね」
「まあ大丈夫よ、いざとなったらハイトさんを頼るから」
「それはダメ!私が守る!!」
急に元気になるレベッカはハイトを押し退ける。
「ほらね」
「ま、まあこれなら……」
「サーニャに手を出そうとしたらぶっ殺す!」
「うわぁ……」
殺る気満々の目付きにハイトは距離をとる、その間にレベッカは勝手に依頼を取ってくる。
「とりあえず最初はあんたのドロップ率の確認とサーニャのスタミナ確認。いいわね」
「あ、はい……」
「さっさと行くわよ!!」
怒った足取りで出ていくサーニャとハイトもついて行く。
街の外に出るとさっそく雑魚のモンスターが現れるがレベッカは有無を言わさず切り倒して進む。
「どおぉりゃあぁぁ!!死ねぇぇぇぇ!!」
圧倒的な力の差に雑魚モンスターは引いていくが怒りに身を任せたレベッカは後を追い粉砕していく。
その姿を背後から見て追うだけのサーニャとハイト。
「さすが降魔大剣の使い手ですね、雑魚が粉々に粉砕されていく」
「私は直接見たことがないのですがレベッカはこんな感じで先陣を?」
「俺も大して見たことはないのですが聞いた限りでは怒号を上げ軍の士気を上げながら先陣をきったと聞きました。噂では『絶対に魔王にしてはいけない女』と」
「ふっ、確かにそうですね」
思わず吹き出して笑うがたまたま聞こえていたのかレベッカの手が止まりその場に大剣を突き刺し置いてハイトの胸ぐらを掴む。
「はぁぁぁ!?何その噂!?!?」
「いやいや俺は噂としか聞いてない、それに俺が言ったわけじゃないですよ」
「言い始めたヤツぶっ殺す」
レベッカは大剣を抜くとそのまま一振する、前方にあった木々だけでなく岩など全て綺麗に切れる。
サーニャとハイトはそれを見てたしかにレベッカは魔王にしてはいけない人物だと理解した。
「さっさと行くわよ、こんな雑魚にかまってるヒマはないわ」
「お、おう……」
「は、は〜い……」
その一振からか雑魚モンスターはさすがに本能的に危機を感じたのか一切現れることなく目的の場所に辿り着く。
「とりあえずここね、依頼内容はブラックハウンドの討伐よ」
レベッカは依頼内容を思い出してサーニャとハイトに伝える。
「何体討伐ですか?」
「軽く十体」
「それなら俺とレベッカさんだけで余裕ですね」
「まぁね」
ブラックハウンドは中級モンスターとして登録されている、本来はそれなりの冒険者が討伐にあたるがレベッカとハイトにとって取るに足らないモンスターだったがレベッカは違う目的でこの依頼をとった。
「討伐が依頼だけどあんたのそのスキル確認よ、ブラックハウンドのレアアイテムはもちろん知ってるわよね」
「はい。『黒炎爪』ですよね」
「そう、あとは『赤目玉』と『炎天の牙』。この三つがレアアイテム。普通のアイテムはそこら辺の雑魚でも落ちる『牙』や『爪』。あんたのそのスキルはこのレアアイテム三つどれに反応するの?」
「あーそこはちゃんと確認してませんでした、ゴブリンはひとつしかレアアイテム存在しないので確定でしたが複数は初めてですね」
ハイトのスキル『ドロップ率100%』の確認をするレベッカはハイト。少し考えたあとレベッカはサーニャを呼ぶ。
「なるほど、サーニャ」
「ん、なに?」
「コイツのスキルの詳細は何か知ってる?」
「私はスキルしか知らないよ、その効果自体は秘匿事項でもあって中央連合からは情報開示どころか抹消されてる」
「ん〜、ということはやらないと分からないってことね」
「そうだね。ちなみに私はどうする?」
「ブラックハウンドはそこそこ強い、私からすれば雑魚に等しいけどサーニャには一体だけでも戦ってもらうことになるけど大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「そう分かった」
まだ少し心配だったレベッカだがサーニャが笑顔で大丈夫と言うのを見て安心した。
「それじゃあブラックハウンド討伐始めよう」
レベッカはポケットから白い粉を撒く、それはモンスターをおびき寄せる粉で少し経ったら周りからモンスターが近づいてくる気配を感じ取る。
「あんたはレアアイテムのドロップ確認後、即時に私に知らせてサーニャのカバーに回って、私は討伐数とは関係なく向かってくるもの全て切り倒す」
「了解」
ハイトが返事をすると同時に多方向から黒いオオカミが襲ってくる。それが討伐対象のブラックハウンドだった。
「半分死ねぇぇぇ!!」
半分と言いつつも一振で約三分の二のブラックハウンドの大軍を倒す。
「爪、牙に爪。クソドロップ。あんたは?」
「『黒炎爪』ひとつに『赤目玉』ふたつ。ランダムぽい感じ」
残りの三分の一を素早く倒したハイトはアイテムを確認する。
「分かった、サーニャは?」
レベッカはサーニャの方を見るとサーニャは一体のブラックハウンドと睨み合っていた。
そしてサーニャは必死に剣を振るがブラックハウンドには掠りもせず絶妙な距離を保ちつつ機会を図る。
「サーニャ。大丈夫?」
「だ、大丈夫、ただちょっと振れないだけ」
ほとんどの新人冒険者は当然剣をまともに扱えない、サーニャも新人同然であり急に中級モンスターを相手にすることが間違っていた。
「レベッカさん、さすがに分が悪いとかの話ではなく段階を踏まないと……」
「たしかにね、サーニャ。私が悪かった今回は……」
サーニャはレベッカの言葉を無視して諦めず剣を振りブラックハウンドに立ち向かうとたまたま剣が掠り少し血を流すブラックハウンド
「あ、当たった……」
初めて当たったことに喜びを感じたサーニャは一瞬気が緩んでしまい。
「――あっ……」
ブラックハウンドはその隙を逃さずにサーニャに噛み付こうとした。
「――サーニャに噛み付こうなんて億万年早いんだよクソ雑魚モンスターがっ!!」
レベッカがブラックハウンドにドロップキックをかましたあと頭を踏みつけ潰す。
「死ね死ねこの雑魚が!!」
何度も踏みつけるレベッカ、その間にハイトはサーニャの元に歩み寄る。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。すみません」
「いや〜早かったですね、レベッカさん」
「すみません私が気を緩めてしまって」
「そうよ、まだモンスターは倒してないのだから気を緩めちゃダメ、それがこの危険な世界なのよ」
さっきの何度も踏みつけたブラックハウンドから落としたアイテム、爪をハイトに投げ渡すレベッカはサーニャに言うとサーニャは謝る。
「ごめんね、レベッカ」
「まあでも中級モンスターに掠りでもさせた新人はサーニャが初めてだから上出来よ」
賞賛するレベッカだがやはり納得のいかないサーニャだったがハイトがサーニャの剣の振りを観察して分かったことを話す。
「おそらくサーニャさん、その剣が身の丈に合ってないのかも」
「なに?私が選んだ装備が悪いってこと?」
「いえ装備はかなり頑丈で先程のブラックハウンドの一撃はレベッカさんがわざわざ急いで蹴りにいかずとも多少は防げたでしょうが振りを見るかぎりでは無駄な振りといいますか経験上今後伸び代がありません」
「ん?あんた地味に私に嫌味ぽいこと言った?」
「それってやっぱ私は冒険者に向かないってことですか?」
「そうではありません、その剣を短剣に替えてみてはどうですか?」
レベッカを無視して話を進めるハイトは持っていた短剣をサーニャに渡す。
「短剣ですか?」
「軽く振ってみてください」
「はい」
サーニャは短剣を振りハイトはそれをじっくり観察する。
「どうですか?」
「剣より軽くて小回りが効きます」
「女性冒険者は主に短剣を使います、理由はサーニャさんが言うように軽くて小回りが効くので素早く動けるからです。しかし見てわかる通り刃の部分は剣より非常に短いためモンスターの弱点や急所を的確に見定め切る必要があるので大変ですが今後もしレベッカさんなどパーティーを組む場所は馬鹿みたいな大剣に普通の剣などいる場所は好都合です。どうですか?そちらの短剣に替えては?」
「やっぱバカにしてない?あんた」
「替えてみます」
「はい、俺もサーニャさんはそちらの方が似合いますし動きや性格上そちらの方が好都合かと思いますよ」
「ありがとうございます。さすが指揮官をしていただけありますね、人を見抜く目が凄いです」
「いえいえ大したことではありません、冒険者を正しく導き正確で的確な事を教えるのが俺の仕事でしたので」
完全に二人きりの世界にいつの間にか蚊帳の外のレベッカ。
「あの〜〜、とことんバカにされたあげく忘れ去られた私はどうすれば?」
「ああごめんねレベッカ。せっかく装備を揃えてもらったのに」
「ん〜〜そうなんだけどそうじゃないんだよな〜〜、まあいいか。とりあえず討伐数は達成、あんたのレアアイテムが複数の場合はランダムということも確認した。サーニャは装備の変更と。たった一回で全てしたいことが出来てよかった」
サーニャが怪我もなく納得した様子に怒る気力さえも無くなったレベッカは今回の目的が達成したことに軽く頷き喜んだ。
「しかしあんた『ドロップ率100%』というわりにレアアイテムが複数の場合はランダムとか正直100%とは言わないよね?」
「俺もそう思いました。だけど落ちるだけマシだと思いますね」
「はいはい100%の余裕ですか」
「ちなみにですがレベッカさんは何かのレアアイテムを求めてるんですか?」
「そうじゃなかったらあんたをパーティーに入れてないわ」
「そうですよね、ちなみに何のレアアイテムを?」
「ドラゴンのレアアイテム『宝玉命』」
「………………え?」
急に固まったハイトだがレベッカは気にせず続ける。
「いくら討伐しても出てこなくて、ましてやドラゴンの討伐なんてまず依頼から中々無いから報酬金無しで探したりするからドラゴンを討伐する冒険者が少ない、だから情報も少ない」
「…………えっともう一度聞いても?」
「はぁ?ドラゴンのレアアイテム『宝玉命』よ、次同じこと聞いたら切り殺すよ」
「あーーはい。うん、そのレアアイテム。普通に落ちますよ」
「また100%アピール。いいよそんなの、とりあえず手伝ってよね」
「違います、それ普通のアイテムですよ」
「はぁ?」
「ドラゴンのレアアイテムは『宝玉心』です」
「え?え?ちょちょちょっと待ってどいうこと?」
突然のカミングアウトに動揺するレベッカ。
「たしかにモンスターのドロップアイテムはレア含めてほとんどが確率です。先程のブラックハウンドでは俺の確定ドロップを含めてアイテムは六つ。襲ってきたブラックハウンドは約二十。討伐数の倍でしたがまあそこはいいでしょう。そして俺の確定ドロップを除くとドロップしたのは僅か三つです。二十体から三つと考えるとあ〜まあ微妙ですね、ちなみにこれまでレベッカさんはドラゴン何体討伐を?」
「三十二」
「う〜〜〜ん、それ以外のアイテムは?」
「無い」
「う〜〜〜〜〜〜ん」
かなり険しい表情をするハイトは一度唾を飲み込むと言葉を発する。
「レベッカさん。もしかして運悪い?」
その一言によって時が止まったかのように三人とも黙り込み静寂が訪れた。
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