第30話 世界征服者の遺志を継ぐ
ノガイにとって、邪魔な男が2人いる。ホラズム総督サルジウタイ附馬と、探馬軍総司令官タマトクタイである。
コンギラト部族のサルジウタイ附馬は、トクト大王の義父であり、クリミア総督ヤイラクの父である。中央アジアのホラズムを統治し、対元朝・対インド方面の商業経路を管理し、巨額の財源を持っている。現有兵力は1万騎程度であるが、ただし、この軍は動かせない。とはいえ、息子であるヤイラクのクリミア軍歩騎混合3万がいる。クリミア軍の実際の司令官はケレイト部族のギレイであるが、ノガイ軍にクリミアを略奪されてギレイは完全にトクト派となっている。
また、諸王タマトクタイは北コーカサスのテレク河流域に常駐し、兵力は3万騎である。デルベントでイルハン朝と接しており、つねに戦ってきた精鋭を握っている。今次内戦には1万騎を率いてきた。イルハン朝の若き君主ガザンは、ジョチ家の内戦に中立を表明したが、専守防衛のための戦力として2万騎を残してきた。
実は、1291年に先王トレブカとその支持者を排除して、トクトを推戴したのはノガイ、サルジウタイ、タマトクタイである。ノガイとサルジウタイの友好関係の証として、サルジウタイの子ヤイラクはノガイの娘を娶り附馬となった。ノガイとトクトが対立すると、サルジウタイとタマトクタイはトクトを全面的に支持した。
歴代ジョチ家当主を列挙すると、次のようになる。
初代 ジョチ…チンギス・カンの長男
2代 バト…ジョチの次男
3代 サルタク…バトの長男
4代 ウラガチ…サルタクの子
5代 ベルケ…ジョチの三男
6代 モンケテムル…バトの次男トクカンの嫡長子
7代 トデモンケ…モンケテムルの同腹弟
8代 トレブカ…トクカンの長男(庶子)の子
9代 トクト…モンケテムルの五男(嫡子)
ノガイが先王トレブカを排除した理由は、トレブカの覇気のなさに絶望したからであった。トレブカを即位させると、ノガイは新王トレブカとともにポーランド、リトアニア、ハンガリーなどに侵攻した。結果、リトアニアは服属したものの、ポーランドもハンガリーも手に入れることができなかった。その後、トレブカは遠征に消極的になった。多数のヒト・モノ・カネを得られたのだから、トレブカも周囲も満足だった。これにノガイは激怒した。チンギス・カンは「アルタイ山脈以西はすべてジョチのもの」だと言った。これは憲法である。ノガイは欧州征服にこだわりつづけ、トレブカを抹殺した。
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