はみだしミニーチェ『ニヒリズム』

 ニヒリズム(虚無主義)とは、「この世には意味がない」「価値のあるものなどない」という思想が行き着いた果てにある厭世感である。


 ニーチェはニヒリズムの思想家とも言われ、ニヒリズムを提唱したかのように思われることもあるがこれは間違いである。


 ニーチェの時代、科学が飛躍的に進歩し、地動説、万有引力、進化論などにより物語的に構築された宗教的観念が否定されていった。

 また産業革命により人々の生活に余裕が出てきたために、生きること以外の『思想』という部分に多くの者が注視していったことも要因と言える。


 ニーチェは、そんな人々がニヒリズムに傾倒していく時代に対して、ニヒリズムの中での生き方を提唱した人物だ。

 もっと言えば、ニヒリズムに溺れてはいけないという反ニヒリズム的思想を語っているとも言える。


 ニヒリズムの世界において、自らの意志を尊重し突き進む超人になるべきというのはこれまではみだしミニーチェで語ってきた通りである。


 くれぐれもニーチェが「ニヒリズムになるのだ!」と提唱していたわけではないということは間違いないでいただきたい。


 産業革命以降、合理主義が隆盛し、その結果人々にペシミズム(厭世感情)が蔓延する。

 そしてその後の時代にやってくるのはロマン主義だ。

 感情を揺さぶる芸術、音楽、文学、エンターテインメント。

 それは深い喪失感のニヒリズムの反動とも言える。


 現代日本では、狂った好景気の後に長く苦しい時代がやってきて無駄を省きたいという欲求から合理主義がもてはやされた。

 やがてそれに疲れた人たちは『エモさ』という感情の躍動に縋るようになる。

 これからはロマン主義の時代だ。

 ニヒリズムに囚われてションボリしてるなんて時代遅れだぜ。


 そうなってもおかしくなかったのだけど、コロナのせいでパーティ気分も台無しなのでこれからは哲学だ!


 という、飛躍した発想でお送りしている『超人ニーチェと神の死んだ世界』ですが、いよいよルサンチマンとの対決。


 果たしてニーチェは生き残ることができるのか?

 ニーチェ、死なないで!

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