はみだしミニーチェ『恋』

 フリードリヒ・ニーチェは実在の人物であり、物語のキャラクターというわけではないのだから、あまり個人的な部分に深入りするのは道義的によいこととは言えない。


 ただし、彼の人生は彼の思想に大きく影響を与えていて、そこに触れずに語るというのも難しい部分がある。


 思想的に関係があると思われる部分だけまとめたい。


 まず、ニーチェは父が早逝し、弟も亡くなり、妹と母、そして祖母とおまけに叔母たちという女だらけの環境で育っている。


 これが彼にどういう影響を与えたのかは不明だが、女性に対して苦手意識を持っていたらしい。


 ニーチェの人生の中でとりわけ語られるのがルー・ザロメとの恋だ。


 哲学的な議論を交わし友人となったパウル・レーの紹介でニーチェは17歳年下の(当時ニーチェ38歳、ザロメ21歳)ルー・ザロメと出会った。

 この時点で、友人パウル・レーはルー・ザロメに告ってた振られている。


 そしてニーチェはすぐにルー・ザロメを好きになっちゃってる。


 機知に富み、理解力が高く、対等に議論ができる女性であるルー・ザロメは魅力的だったのだ。


 思いを捨てきれないパウル・レーの気持ちを知ってか知らずか、ルー・ザロメはニーチェとパウル・レーとの三人での共同生活を始める。


 そこでニーチェはルー・ザロメに求婚するが、やはり振られる。


 ルー・ザロメとしては、思想こそが大事であり恋とか愛とかは邪魔だった。


 お互いに振られてるパウル・レーとニーチェだが、共同生活でどんどん仲が悪くなっていく。

 さらにニーチェの妹のエリーザベトがルー・ザロメに敵意を燃やして有る事無い事吹き込んでもう関係は最悪になる。


 ニーチェは失意の元、ルー・ザロメと別れ人間不信が一層深まった。



 近代哲学の終焉から現代思想になっていく時代、社会のあり方とそこで生きる人間のあり方にフォーカスを当てる思想が中心となった。


 ニーチェの思想において語られることに注目してきたが、それ以上に不自然なまでに語られないことがあるのに気づく。


 それは人間関係だ。


 社会と人、その中で人との関わり合い、友人や恋愛などのあり方というのは欠くことが出来ない。


 しかしニーチェはこの部分は恐ろしく淡白である。


 ルー・ザロメと別れた後に、ニーチェは『ツァラトゥストラはかく語りき』を書き、その後の作品群を執筆していく。



 もし彼の恋が……、そんな想像をするのはやめておこう。


 彼の思想が花開いたきっかけの一つとして、それはきっと意味のある大切なことだったのだろうと思う。

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