はみだしミニーチェ『アフォリズム』
ニーチェが現代において興味を持たれる一因にアフォリズムがある。
アフォリズムとは、短い言葉で簡潔に思想を表現したものだ。
格言ともいわれるが、どちらかというと格言が世間一般の通念を簡潔に示したものに対し、アフォリズム(箴言)は個人の思想を示したものという印象が強い。
ニーチェは強い言葉でズバッと断言することで、その言葉だけが現代にも残っていたりする。
「神は死んだ」
「事実は存在しない、ただ解釈のみがある」
「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」
等は聞いたり目にすることがあるだろう。
言ってみればニーチェは目を引く(古典文学的な)言葉を多用したため、現代の情報量が多すぎる時代に意に反して適応してしまった哲学者とも言える。
だだやはり問題があり、言葉にはそれに至る文脈があるためにその言葉だけを切り取られると意図が間違って伝わる恐れがある。
ニーチェの言葉で取り沙汰されるものも、ちゃんと読めばちょっと違うんですが、となることも多い。
なにぶん情報量を圧縮した言葉なので、きちんと解凍できなければ的外れになる。
『野球回のある物語は傑作である』
という言葉をみてみても
野球回を成立させるためにはメインのキャラクターだけでなく、それ以外のキャラクターや敵対する側の描写をきちんとする必要があり、それぞれの見せ場を組み立てながら最終的に勝敗を決するというカタルシスに導く構成でなければならない。
それができれば自ずと物語としての深みが生まれる。
故に『野球回のある物語は傑作である』という意味合いが内包されている。
このようにアフォリズムは強い言葉ゆえの説得力があり、引用もしやすいために誤用もされやすく、言葉が独り歩きしがちなので自らの言葉として発するときは十分注意しなければならない。
また、ニーチェは『野球回のある物語は傑作である』なんてことは言ってない。
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