はみだしミニーチェ『永遠回帰』

 永遠回帰(または永劫回帰)はニーチェの後期の思想の中で語られる。


 この考えは、ヨーロッパの思想の中心となってるキリスト教的な、神が世界を作って、なんやかんやあって、最後の審判がくる。という時間の流れを否定したものだ。


 この世には意味はないし、過去にも意味はない。未来にも意味はないし、失敗しようが成功しようが全部意味がない。ってことは、もう過去とか未来とかない。意味のないことのあとに意味のないことがくる、始まりもないし終わりもない。永遠に無意味が循環していくのだ。という究極のニヒリズムの思想だ。


 この考え方、東洋の思想を知ってる人にとっては、特段新しいという印象もないかも知れない。

 仏教の輪廻転生であったりヒンドゥのブラフマンなど、すべての時間を繰り返す存在というモチーフがある。


 ただちょっと面白いのはこれが当時最新の科学である『エネルギー保存の法則』から着想した思想ということだ。

 熱力学は当時の自然哲学に着想していたりと、この時代の哲学と科学は相互に影響し合う存在だった。


 そしてここで語られることの一つに最後の審判などを含めた死後の世界のようなものはないという考えがある。

 死後もなければ天国も地獄もない。


 もっと言えば、プラトンのイデア論であるとか、哲学は今まで『真の〇〇』みたいな形而上(私達がいる有形の世界以外の場所)の概念というものは全部ない。という結論にたどり着いている。


 19世紀のニーチェは「そこに無かったら無いですね」という現代のダイソーの店員が語る観念と同じ領域にまで到達していた。


 『バックヤードに在庫はなく、棚に出ているのがすべてである』

 この世界はダイソーと同じ構造であるとニーチェは考えた、と言っても過言ではないだろう。

 いや、それは過言か。

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