はみだしミニーチェ『力への意志』

 『力への意志』とはニーチェ後期の考え方で、また死後に妹エリーザベトによって編纂された著作のタイトル(『権力への意志』ともいわれる)でもある。


 どんな人間にも力への意志というものが存在する。


 例えば奴隷など力のないものは自由を欲する。


 ある程度自由を持った力のある若者などは、その力の拡張を求める。


 メチャクチャ力のある「もうこれ以上お前はなにもいらないだろ」という者は、人々の幸福などの実現のために自己犠牲という奉仕を求める。


 そういう人それぞれの思惑のある力への意志が混在して世界はバランスを保つらしい。



 その弱いものたちが、努力するのが面倒で自由への渇望を諦め、自分自身を納得させるために無理やりひねくりだしたのが『ルサンチマン的な逆転』である。


 そこには「貧しくて従順で欲張ることのない俺たちって結局一番えらいよね」という自己欺瞞がある。


 そういう道徳を隠れ蓑にして、結局力への意志を認めずに足を引っ張り合うのはよくないよ。

 自由になりたいって言ってもいいじゃん。



 ……となればよかったのだけど、ここでちょっと問題が起きる。


 『力への意志』という著作は、前述したとおりニーチェの死後に妹エリーザベトによって編纂されたのだ。


 そこにはエリーザベトの曲解が入ってる。


 だから弱者のクズどもは足を引っ張り合うからダメなんだよ!

 その点、力を持つエリート様はすごいので、そう言う人に任せていけば世界は良くなります!

 ひいてはそれが弱者のクズたちのためにもなるのです!


 という鼻持ちならない選民思想になってしまった。


 そしてそのエリーザベトが売り込んだ先が、ヒトラーのナチ党なのである。

 そこでこれが大ブレイク。


 ニーチェはナチの歪んだ思想の片棒を担ぐことになる。


 我々の多くがニーチェという名を知ってるくらい有名になれた要因の一つでもあるけど、あくまで曲解でありニーチェ自身はそこまでひどいことは言ってない。(ちょっとひどいことは言ってる)


 妹エリーザベト、ニーチェの唯一と言ってもいい恋路を邪魔する偽手紙を書いたりもする、結構手に負えないヤンデレなのである。

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