2019.10.19

 腹立たしい。そのひと言だった。

 何故理解しないのか、最善を選ぼうとしないのか。いやそんなことよりも、あの子になんと言えばいいのだろう。一緒に仕事をする、同じユニットになれば、いつでもあの子に会わせてあげられる。間近で感じてもらえる。こちらがしたてに出たというのに、その申し入れを断るだなんて。まったく腹が立つし、思う通りに進まないのも僕のプランとは異なる。

 数日間、あの男の顔が脳裏に浮かんでは苛立ちが止まなかった。これはずっと続くかもしれない、どう断ち切るのが最善だろうか。

 思考しながら自室でテレビモニターを眺めていれば、いつだったかプランニングを立てた子がバラエティに出演していた。

『クラウスくんはハンター系アイドルなんだってね。どのへんがハンターなの?』

『…………』

『ん? ああ、あんまり喋らないんだっけ。そうだ、せっかくだし一曲披露してみてよ! 駆け出しだから持ち歌はないって聞いてるけど、同じ事務所のアイドルの曲なら使っていいんじゃない?』

『…………』

MesseRメッセか、ノースリベラズム…… あ、最近N-Sノースサウスリベラズムになったんだっけ。ノーサスの曲のほうが合ってるかな?』

『ノー、さす……?』

『え、知らないの?』

『…………』

『んー。次の子行ってみよっか! ええときみは──』

 ああ、うまく使えていないな。トレーナーは何をしているんだ。この子も、たしかクラウスとかいう子。せっかくの鷹の名は宝の持ち腐れだ。その長身も、ハーフという特異性も、何もかも。Bsプロに顔を出していたときは随分と懐いてくれていたけれど、それだけだ。僕の話を聞きたがる、幼稚園児がそのまま大きくなったかのような子。頭の回転は、プランから漏れてしまっていたかな。それならばもう、この子は使えない。

 そういえば、あの事務所は腹の立つ男ばかりだ。プランを拒絶するアイドル、僕のプランを鼻で笑う男、社長。トップがそうなんだ、気品も何も無い。だからこそ──

「──ああ、忘れてた」

 もうひとり、あの子の興味の欠片がいた。あっちのほうが、使いやすそうではある。それに、上手くいけば腹の立つあいつらの鼻を同時にへし折ることができる。

「…………ふふ」

 覚悟していてね、Bstrange pro.ビーストレンジプロ

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