2 企画
「ええと、セゾンの
「マリーメアの
「げえっ、あいつら来るのお? んーとあとは、ピエージェ……ああ、いおりんのとこか。そこから
「だいちゃんとたっちゃん! ぎんちゃんとひこちゃん!」
「ひええ、人いっぱいだあ……」
参加者リストを読み上げ、
「トーナメントどうしよっか。人数的にボクたちからパフォーマンスも必要そう?」
「クラおどりたい!」
「俺は当日も適当なところでいいよ。あ、優勝賞品のツッコミソード、そろそろ完成するみたい」
「ああもうお前ら! 不慣れなリーダーを気遣って! ひとりずつ話して!」
そういうわけで、各々のやりたいことをすべて放り込んだ企画──
秋風が肌を撫でる。公式Tシャツは失敗だったかなあ、などと肩を震わせながら、鳴は
「ん、どうしたの?」
「あっ! いえ! なんでも──」
「ふふ、鳴くんは面白いね」
何が面白いのか、どう言葉を返せばいいのか、わからないままにパクパクと口だけが動く。初対面の、しかもエーデルの、マリーメアの、キラキラの、アイドルの先輩と二人きり。設営のほうにいれば良かったと若干の後悔とともに、隣に立つイケメンのオーラは役得だが今すぐに溶けてしまいそうだ。
「あっ、き、霧兎さん! ビラ、多く持たせちゃってす、すみません!」
「ああ、気にしないで? ほら、俺のほうがアイドルとして先輩だし」
後輩に頼ってもらえるのは嬉しい。そんな霧兎の言葉に、鳴はまた溶けそうになる。
「えっ、えっ、うっ、すみません。えっと、あ、お、おれ、飲み物買ってきます! 何がいいですか!」
「飲み物? んー……じゃあ、俺は水がいいな。えーっとお金は」
「お、お金! けっこうです! す、すぐ買ってくるので!」
こういうことに経費を使わねば。脱兎の如く走り出し、鳴は自販機へと逃げ出した。
霧兎だからこうなわけではない。誰にでもこうで、言葉が上手く出てこなくて。なんとなくパシリを名乗り出てしまう。
(またやってしまった)
小銭を機械にねじ込み、ガコン。出てきた水を抱え、自分も適当に缶コーヒーを選ぶ。が、出てこない。
「た、足りない……」
小銭が。いくら財布をひっくり返しても、出てくるのは1円だけ。こういうときに限って、札も諭吉しかいない。お金をもらってくれば良かった、と渋々踵を返せば
「ぶっ」
何かに額を打ち付けた。
「……」
「だえっ!?」
思わず珍妙な悲鳴をあげてしまう。目の前に佇んでいたのは、
「は、
「お前、たしかあいつらんとこの」
あいつら、もしかして
「せいぜい、楽しませてもらう」
「えっ」
渡された缶コーヒー。そのまま立ち去る男の背を眺め、鳴はコーヒーを握りしめた。
「極甘コーヒー…………無糖が良かった」
霧兎の元へ戻るやいなや、支給されたBsプロ水に気づくのはまた別の話。購入したほうの水を選んでくれた霧兎は優しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます