3 流行ダン!
トーナメントは、最大四回戦うことになる、勝ち上がり戦だ。参加者をシードに置かないために、ハヤラスの面々も
そして、鳴の初戦の相手はチームP(この名前も芧が勝手にわかりやすく名付けたものだ)の
「いくよっ、みさと!」
「優、流れは大丈夫だよね?」
「……もちろん!」
ふたりはぴったり息が合っている。優が時折アドリブを入れても、それにしっかり応えるのがみさとだ。先に繰り広げられる演目を眺め、鳴はひとり肩をさすっていた。
結果は惨敗。笑顔で相手を賞賛したものの、控え室に戻ってひとりでプンプンした。
二回戦、いよいよクラウスや陽向の出番である。初戦後に合流した芧と共に、鳴は最前列でタイムキーパーを務める。
つい先程鳴を負かしたチームPの対戦相手は、マジアワの
そして次、クラウスの対戦相手はなんとセゾンの
ここまでのキーパリングを終え、鳴は陽向に休憩の合図を送る。
「
「うぇ?」
「流行らす! 主旨を理解してない!」
「しゅし? しゅし…… しゅっしゅー!」
「ぽっぽー」
「み、みーくんも乗らないでよお」
「まあまあ…… 楽しんだもん勝ちだから」
「初戦敗退でなに安堵してんの鳴ちゃん」
主催がこれだ。頭に血が上る陽向を押さえつつ、各対戦の結果に目をやる。Aブロックの結果は、おそらく周りから目をつけられていただろうクラウスや、鳴を負かしたチームPが敗退。準決勝へとコマを進めたのは詩と純だ。かわいいもの対決といったところだろうか。そうして休憩を挟み、Bブロックの対戦となるが、そこにはチームT──ティアゼがいる。相手は
「ここの対決、怖そう」
「すっごい小並感。えー、でももしあいつらが勝ってきたらボクと戦うんでしょお? 顔見たくないのにー」
「もう勝ったつもりでいるのヤバい」
「とーぜん」
鼻を鳴らし、陽向は三人から離れるとにっとブイサインを送る。
「
その宣言通り、陽向はチーム
「くーやーしーいー!」
「お疲れ、ヒナ」
「みーくん! ボク悔しい! ぎゅってして!」
「はい、ぎゅう」
「うえっへへへ」
「いやきしょいって。うん、ともかく残念だったし、まさか決勝がプロプリに支配されることになるとは……」
「マコちゃんすごい!」
準決勝まで駒を進めたものの、陽向は霹靂神の前に敗れる結果となった。決勝戦の前に前座を務めるヴァンドたち不思議モンスターズを見送ってから、陽向は人知れず悔し涙を零した。どこか懐かしささえ覚える曲目を耳に挟みながら、ヴァンドと共演するクラを除く三人は大会締め括りの準備に入る。
決勝戦は、霹靂神の二人対、セゾンの葵海坂純だ。どちらも強豪プロダクション・プリローダ所属のユニットであり、さすがはプロプリ、といったところだろうか。どちらが勝ってもおかしくはない。そうなると、懸念すべきことが鳴にはあった。
「……葵海坂さんは許してくれそうだけど」
「言いたいことはわかるけど、告知の段階で出してるんだから大丈夫でしょ」
「俺は欲しいよ?」
「お前の発案だからそりゃな! ていうか欲しいなら芧も出場すれば良かったじゃん!」
「俺はダンスは観る専門ざんす」
「あ、今のはちょっと面白い」
ヨヨイヨイ、と芧が盆踊りよろしく振るう金色のハリセン──もとい、ゼッタイバズルソード。これが優勝賞品なのだ。霹靂神の怖いほう、
「どうか葵海坂さんが優勝しますように──!」
「うわ、磯沢さんに言ってやろ」
「やめて!すみません!どっちも勝ちますように!」
「なんじゃそら」
そんな鳴の不安をよそに、熾烈なパフォーマンスバトルは最高潮を迎えるのであった。
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