17.初めて気付く異常性
「し、四凶が一柱、
白石に対してとりあえず粗方の説明を終えた俺たち。青龍のことも話したし、
まぁ、さすがに俺のギフトのことや、泉への接続者と言うことは隠してあるが。この二つはまともな魔法使いにとってはかなりの劇薬になってしまうからな。
まぁ、その言う言わないの判断をしたのは青龍であって俺ではないので、あんまり偉そうなことは言えないのだが。
「た、大変なことじゃないですか! ていうか、なんでそんな大事なことを私たちに隠してたんですか!! バカなんですか! 死ぬんですか!」
そこからは、白石の罵倒がひたすら続いた。しばらくして罵倒の種が尽きたのか、肩ではぁはぁと息をする白石。
「とにかく、応援を呼ばないと! 四凶が相手なら私よりも上位の階位の人たちを……、っていうか、あと一週間もないとかどういうことですか! 絶対間に合わないじゃないですか!」
「そんなにキレまくって疲れないか?」
「誰が、キレさせてると思ってるんですか!!」
俺の言葉で更にキレる白石。うーむ、本来の白石はこういう奴だったのか。なんかイメージが狂うな。
「まぁ、心配しなくても大丈夫だぞ白石。俺だって今まで対
「……その特訓の成果が第五位階魔法の無詠唱ですか? 確かにその努力は認めますが、無詠唱を習得してる暇があったらもっと別の、魔術の研鑽とかそういうのをした方がいいですよね? なんですか、努力の方向音痴ですか?」
いや、第十位階まで使えるんだが。こうなったら、第十位階とまでは言わずに、第六位階までは使えるよとか言ったほうがいいのかも知れん。
しかし、青龍のほうを見ると、人差し指を縦に口に当てていた。
何も言うなということか。
まぁ、確かに白石が相手とは言え、自分の能力を全部正確にバラすのは馬鹿のやることだが。
「まぁ、あなた方た心配する必要はありません。私は勇人様単独で十分倒せると踏んでおりますので、あなた方の助力は不要です。今話したのも今回の貸し借りをなしにするために話しただけで、あなた方の助力を期待してではありませんので」
「だからって、はいそうですか、と引き下がれる訳ないでしょ! 確かにサファイアのあなたに比べたら足手まといでしょうけど、同じ街に住む人間として、何より、大聖堂のデーモンバスターとしてこんな事態を静観しているわけにはいかないんです!!」
いや、青龍は戦わないって言うか、戦えないんだが。俺単独で戦うって青龍言ったよね?
まぁ、現実的に考えればサファイアの魔法使いと教会にも所属してないその弟子となると、師匠の方が主になるのが普通だもんな。ただ、青龍は普通ではないと言うのが。
て言うか、ちゃんと四神の青龍だって説明したのに、そこらへん完全にスルーだな白石のやつ。まぁ、そっちよりも驚くことがあったから、そっち優先なんだろうけど。
そして、また新しい単語が出てきた件について。デーモンバスターってなにさ、デーモンバスターって。
いや、字面から大体想像は付くけどさ。そうかー、白石は実家が教会だからエクソシストなのかー。ブリッジして階段降りる子供とか退治するのかな?
「そうですか、ではお好きなように。あなた方が参加することは邪魔しませんので。せいぜい勇人様の足を引っ張らないようにお願いいたします」
「ぐぎぎぎぎ」
煽るなー、青龍のやつ。そこまで煽らなくても普通に協力を求めれば良いのに。俺としても単独じゃなくて仲間と一緒に戦えるならその方が絶対にいいと思う。
これはあれかな。こっちが上から目線で出ることで向こうの助力を借りにしないためか?
青龍の奴、貸し借りとかすごい気にしてたしな。向こうから自発的に協力するなら借りにはならないってことかか。
「あー、青龍もあんまり煽るなよ。どっちにしろ、地元で強大な妖が出る以上、地元の退魔組織にバレない保証はなかったわけだし。むしろ、協力を得られるなら願ったり叶ったりだろ?」
「私としては協力も不要なのですがね。まぁ、勇人様がそうおっしゃるなら、それで構いませんけど」
「と、ともかく! 最低でも京ちゃんは戦力として確保出来るとして、兄さんは事務方だから戦力外として……、先輩は他に助力期待できる知り合いはいないんですか!?」
「いないなぁ、いたら最初から勧誘してるし」
正確には、姉ちゃんが戦力としてカウントが出来るかもだが。最初の
でも、異能者じゃないって言ってたし、青龍は俺だけで可能って言ってるから巻き込む気は無かった。
「うがあああ! じゃあ、私と京ちゃんと先輩とそこの怪しい人だけじゃないですか! 無理無理! 勝てない!!」
そこの怪しい人って青龍のことか? て言うか、
「だから、心配ないと申し上げているでしょう。勇人様単独でも十分勝機があります。無限ループさせるつもりですか?」
「その先輩の強さがわからないから心配してるんでしょうがー!! 自分の手の内を晒さないのは確かに魔法使いの基本ですが、こう言う時ぐらい明かしてくれないとこっちは不安でしょうがないんですよ!!」
一理どころか十理ある。とは言え、明かしたら明かしたで白石のやつが発狂しそうなんだが、それはどうなんだろう。
「仕方ありませんね……。勇人様は第六位階を無詠唱で使えます。これで満足ですか?」
流石に、第十位階まで使えるとは言わなかった青龍。しかも、第六位階を使えると言ってるだけで、それ以上が使えないとは言ってないんだよな。嘘は言ってないよな、うん。
しかし、第六位階ってのもどれぐらいすごいかわからないんだよな。
「だ、第六位階、無詠唱……。マジですかそれ。人間の限界じゃないですか! 一体、先輩は何者なんですか!!!」
「えっ」
思わずそこで声を出してしまった俺を責められまい。第六位階が人間の限界とかマジかよ。第十位階どころか、それを無詠唱で使えるんだが。
青龍は人間じゃないから、使えても不思議じゃないが、俺が使えるのは異常なのか。
ていうか、この流れだと第六位階までしか使っちゃいけない縛りプレイになったじゃないか。第九ぐらいのやつ連発で倒そうかと思ってたのに。
「わ、私だって、古代魔法は本職じゃないとは言え、第三位階までしか使えないのに……。そこの怪しい人が古代魔法が専門だとしてもその習得状況は異常です」
「そう言われても、習得出来たもんは仕方ないだろ。まぁ、師匠の筋が良かったということで」
「それはもういいですから!」
うーむ、これでは納得しないか。しかし、俺のギフトに関してはクリティカルな要素だからな。こればっかりはそうおいそれと明かすわけにはいかない。
「まぁ、確かに秘密があるのは事実だ。だが、これに関しては俺のトップシークレットだからな。ちょっと明かすわけにはいかないんだ。悪いな、白石」
「うっ……。そう言われては私もこれ以上言えませんが、せ、せめて本当に第六位階が使えるかぐらいは見せてください。そうしなければ安心できません!」
「じゃあ、適当にあの木に向かってやるぞ」
えーっと、第六位階ってどんなのがあったかな。促成栽培で詰め込まれたから階位と魔法の内容があんまり合致しないんだよな。確か、こいつでよかったはずだ。
「『チェインライトニング』!」
俺が呪文を唱えると、三条の雷が俺の指先から飛び出し、うねりながら狙った木に向かって飛び出す。
いや、雷なんでそれはほぼ一瞬なんだが、表現するとこうなってしまう。実際直進せずにうねって目標に向かってるからな。雷の性質としてそれはどうなんだとは思うが、魔法だから気にしてはいけないのかもしれない。
あ、木が思いっきり裂けた。ま、まぁ雷が落ちたと思おう。それがいい。
「第六位階……、ほ、本物初めて見た」
「これで安心したか?」
「は、はい一応は。でも、当日は私たちも戦いますからね! 先輩は魔法は強いみたいですが、それ以外は強くないみたいですので、京ちゃんが前衛で私が中衛、先輩が後衛で陣形を組めば上手くいくはずです! そこの怪しい人は臨機応変で」
「まぁ、そこらへんの戦闘指揮は青葉かお前に任せる。俺はよくわからんしな」
ていうか、白石のやつさっきから一貫して青龍のこと怪しい人って言ってるが、どういうわけだ?
あ、もしかして青龍本人であることを信じてないとかかな。
まぁ、確かに見た目は普通の美人のお姉さんだからな。東洋の龍みたいな本来の姿は俺も見たことないしな。
そういや、なんで俺は青龍を青龍本人だとちゃんと認識してるんだろうな。昔の記憶は覚えてないが魂が覚えてるとかそういう奴なのかな。
「じゃ、仕事の報告して今日は帰るか。いくぞ、白石」
「そう言えば、仕事に来てたんでしたね。衝撃の事実が多すぎて忘れてましたよ」
さーて、じゃあお楽しみの給料を受け取りに行くとするか。
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