9.他の魔法使いたち
草木も眠る丑三つ時。墓地にていきなり青葉に勝負を持ちかけられた俺だが、相手の隙をついてなんとか勝つことができた。
ていうか、勝ったでいいんだよな? 青葉が起き上がってこないので不安で仕方ないんだが、殺してないよね……?
俺は不安になって、青龍の方を見てしまう。
「大丈夫ですよ。あれは狸寝入りです。心配になって近づいてきたところを討ち取るつもりでしょう」
「チッ、ばれてたか」
その言葉とともに、むくりと起き上がる青葉。マジでよかった。ちょっといきなり第四位階まで使ったもんだから、殺したかとヒヤヒヤしてしまった。
あそこは普通にマジックミサイルとかでよかったよな、俺。
「うーん、ちょっと油断しすぎたな、俺。いやしかし、まさか水かけなんかで俺の隙を突くとは思いもしなかったな」
「初見だから通じただけだろ。二回目からは通じない」
実際、あんなのは奇襲の類なのでタネが割れてれば二度目以降は通じない戦法だ。
「違いない。こんな形でのい決着はちょいと不本意だが、負けは負け。敗者は大人しく引き下がるさ」
青葉は剣を鞘に納めながら残念そうに言った。
うーむ、納刀の仕草ってやつは中々にかっこいいな。俺も剣か刀欲しいかも。
「で、なんだっていきなりこんなことをしでかしたんだ?」
「うん? 別にこれと言った理由はないぞ? まぁ、強いていうならお前がお仲間って知ってどれくらいの実力か知りたかったってのがあるかな。
しかし、今まで俺が気づかなかったのが不覚だな。今までどうやって隠してたんだ、真宮寺。無詠唱が使えるってことは昨日今日で身に付けた実力じゃないだろう?」
「ハハハ……」
青葉大正解。目覚めたのはつい昨日今日です。そんなことを言えるはずもなく、適当に笑ってごまかす。
「しかし、俺が知らなかったってことは、未登録魔法使いになるわけか。俺が一言言えば罰則なしに登録はできるが……。今までモグってたってことは登録したくない理由があるんだよな?」
「あーまぁ、色々察してくれると助かる」
「オーケー。俺とお前の仲だしな。黙っといてやるよ。ただ、バレた時責任は持てないからな。そこら辺はうまくやれよ?」
「分かった。気を遣わせて悪いな、青葉」
「なーに、良いってことよ」
そう言って、ニカっと笑う青葉。こいつは本当にこういう仕草が絵になる奴だな。これで性癖がノーマルなら言うことないんだが……。
「じゃ、明日も学校だし、俺帰るわ」
「おう。っと、あーちょっと明日時間あるか?」
そろそろ解散しようとしたところに、青葉が声をかけてくる。
なんだなんだ、まさかそっちのお誘いじゃないだろうな?
「時間にもよるけど、なんだ?」
「いや、お前がお仲間ってんなら紹介したい奴がいてな。お前もよく知ってるやつだ。同じ街に住む異能者同士、交流を深めようかと思ってな」
「お前、俺が未登録なのを知ってて、他の魔法使いに紹介するのか?」
流石にこいつがそこまで考えなしだとは思わないが、どう言うつもりだ?
「安心しろ。そいつは腰掛け程度で魔導協会に所属してるだけだからな。協会に義理はない。それに俺とお前の頼みとあらば、問題なく黙っているだろう」
「ってことは俺の知り合いの誰かってことか」
そう言われて俺は何人かを思い浮かべるが、俺の頼みを素直に聞いてくれるような奴の心当たりはそう多くはなかった。
「なんとなく誰か分かった気がするが、じゃあ明日放課後でいいな?」
「おう。詳細はまた放課後にな。じゃあな、おやすみ」
そう言って、青葉は高く跳躍すると屋根伝いに跳んでいった。なんだあれ。アニメじゃあるまいし、あんなマネ出来る奴いるのか。
そういや、あいつ魔剣士って言ってたもんな。自己強化魔法とかなんかな? 謎のマジックミサイル回避とかもあったし。
あれ、でもそういえば俺との戦いで魔剣とか全く使ってなかった気が……。
「勇人様よろしいので?」
青葉が見えなくなってから青龍がようやく口を開いた。
「そう言う割には、お前口挟んでこなかったじゃないか」
「勇人様が望まれる交流でしたら私に否やはありません。勿論、害となるようならばこちらで対処いたしますが」
さらっと怖いことを言ってのける青龍。
まぁ、多分俺の知り合いだろうからそう言う事態にはならないだろう、多分。
「まぁ、取り敢えず俺たちも帰るぞ、青龍。ところで、明日の予定だけど……」
「構いませんよ、仮に丸一日潰れたとしても、勇人様のギフトがあればいくらでも取り返しは効くでしょう。最悪魔法だけでもいいのです。肉体を鍛えるのは時間がかかりますが、魔法の習得は勇人様に取っては一瞬ですしね」
「悪い、迷惑かけるな」
「いいのですよ。第五位階まであっさり習得できるならあとは余禄です。どれだけ詰められるかでしかありませんし」
そう言って、青龍は踵を返す。さて、俺も帰るか。
※ ※ ※ ※ ※
「うーっす、真宮寺いるかー?」
次の日、授業が全て終わるなり、青葉の奴が俺の教室を襲撃してきた。
ていうか、来るの早いなおい。
「早いな、青葉。例の用か?」
「おう、そうだ。じゃあ行くぞ」
それだけ言うと、青葉はそれ以上何も言わずに先に立って歩き出す。付いて来いってことか。
青葉にしばらく歩いて付いていく、たどり着いたのは校区内にある教会であった。俺にはカトリック系かプロテスタント系なのか判別がつかないが、屋根の上に十字架がついてる、キリスト教系の教会であることは分かる。
ていうか、こんな場所に教会あったんだな。しかし、教会の関係者に知り合いはいないつもりだが……。
「教会? 随分似合わないところに行くんだな」
「正直俺もここには足を踏み入れたくない……、ないがここに目的のやつがいるから仕方ないだろう」
そう言う青葉は見るからに体調が悪そうに見える。
おい、お前さっきまで元気に歩いていただろ。教会に近づくと体調が悪くなるって悪魔か何かかよ。神社や寺に近づいても体調悪くしそうだ。
「おーい、宗玄いるかー」
「おや、京介。君が自分からここに来るなんて珍しいじゃないか」
青葉が名前を呼びながら教会の中に入ると、中で神像の前に立っていた青年がこちらを振り返る。
見た感じ爽やか系のこれまたイケメンである。黒髪黒目(日本人っぽいので当然だが)に眼鏡をかけているのが、これまたよく似合っている。
オノレ、なんでこうイケメンが周りに多いのか。俺だってなぁ、並レベルのイケメンなんだぞ! 自分で言ってて悲しくなってきたが……。
「来たくはなかったがな。だが用事があるから仕方ない。宗玄こいつは──」
「待った、青葉。紹介するのは俺の知り合いじゃないのか?」
青葉がいきなり俺の知らない青年に紹介しようとするので、思わず制止してしまう。というか、俺はこいつの名前すら知らんわけだが。
「あぁ、こいつはその知り合いの兄だ。俺の友人でもある。まぁ、安心しろ信頼の置けるやつだ。お前がどーしても嫌だってんなら、言わないで置いてやるが。どうせ、本命が来た時に話すんだ。どっちでも変わらんと思うがな」
「まずは紹介をしてくれ……。俺はこの人のことを全然知らない」
「おっと、それもそうか」
青葉はそれで初めて気づいたと言う風で、再び口を開く。
「こいつは白石宗玄。俺の幼なじみで、白石ひとみの兄だ」
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