第五章「サイク王国」
1.特殊依頼
「美しい……、是非私を婿にしてください」
――嘘っ
「あなたを愛しています。私と一緒になって……」
――こいつも嘘っ
「私は貴方を一生幸せに……」
――どいつもこいつも嘘ばかり
「カレハちゃん、僕はずっと君のことを……」
――こいつまで私を騙して……
「愛しきベイビー、僕のラブはフォレバー……」
――許さない、許せない!!
【欲しいか? 欲しいか? こいつらに天罰を与える力を】
――天罰?
【そう、お前を騙す罪人どもを裁く天の力。こいつらは罪深き存在 欲するか? 天が裁く力】
――欲しい、天の力。
【ふふふ、契約……完了だ……】
「美しい姫よ、是非私と……うっ? あれ? か、顔が……どうなって……? ぐわああ!!」
「お嬢様、私はずっとあなたのことが……? ぐあああ!! か、顔が!!!!」
――ふふ、噓つき共め。思い知ったかしら。私を騙す愚か者に天罰、天罰よ、きゃははははは! テーーンバーーーツ!!!!
「えっ? また特殊依頼?」
派遣本部を訪れていたユータはリリアの話に少し怪訝な顔をした。
「そうなのよ、またちょっと特殊な依頼で……」
「またハゲと一緒なのか?」
ユータが疲れた顔をして聞く。
「ううん、今回は単独よ。安心して」
「やっぱり安心なのか、奴と一緒じゃないってのは……」
リリアがユータの背中をバンと叩いて言う。
「何って言ってるのよ、ハゲは関係ないわ」
「ハゲがどうしたって?」
「わっ!! 吃驚した、レナかよ」
ユータの姿を見かけたレナが会話に加わる。
「また人の悪口言ってたんでしょ? 言っちゃおうかな?」
「そんなんじゃない。また特殊依頼だって」
「特殊依頼? どんなの?」
レナが聞くとリリアが答えた。
「うん、ある魔物がいてね、その魔物を見た者の顔が醜く変化しちゃうんだって」
「はっ!? 何じゃそりゃ」
「だからこの依頼は男性限定。女の勇者には絶対に頼めない依頼よ」
「まあそうね。ちょっと遠慮したいわ」
レナが苦笑いして言う。
「男もなるのか? その変顔に」
「みたい」
「う~ん……」
「迷うの? ユータ君でも?」
「でも、ってどういう意味だよ」
「あ、そうそう。ユータ君、また昇級したわよ」
「あ、そう」
リリアの話に無表情で答えるユータ。
「え? 何? 嬉しくないの?」
「どうせまたくだらない名前なんだろ? いかさま勇者とか」
「ぷっ、何なのその名前、だっさー」
「じゃあ何だよ?」
「新しいクラスはね、【適当に学校を出てまずまず強かったんで異世界でもそれなりに活躍したのだが女に弱い設定されてしまった駆け出し勇者】だよ」
「……」
黙るユータ。
「どうしたの?」
リリアが心配そうに聞く。
「まあ何でもいいとは思っていたのだが、覚えられない名前ってのもどうかと思うぞ。最後の【駆け出し勇者】だけで良くないか?」
「仕方ないでしょ、決まったんだから。」
「それに俺は女に弱くないぞ。女だろうがビシバシやるからな!」
「ひ、酷い……、やっぱり私はおもちゃだったのね……」
「げっ!
「おもちゃ? どういう意味、ユータ?」
レナが不機嫌そうにユータに言う。
「ち、違う、俺は何もしていない! 誤解だ、誤解!!」
「私は遊ばれて捨てられた女なのね……」
「な、何を言ってるんだ、お前!」
大声で否定するユータ。
「ハゲがどうしたって?」
「うるさい!!」
現れた瞬間にハーゲンに蹴りを入れるユータ。
「で、ユータ君。受けるのこの依頼?」
「分かった分かった、受ける受ける!!」
ユータはそう言うと依頼指示書をリリアから奪うと、そのまま転移の扉の方へ走って行った。
「こら待ちなさい! おもちゃってどういう意味?」
「また私を捨てるのーー!!!」
「ハゲじゃないハーゲンだ」
ユータは走って転移の扉に逃げ込んだ。
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