077 襲撃
ウォーレン歴9年 陽春の月19日 深夜
サイエの町の次、クィドの町の宿で寝ていた私は、高く鳴り響く鐘の音で飛び起きた。
カンカンカンカン!
私は急いで身支度をして宿の部屋を出る。この音は全国共通だ。――町に危険が迫っている!
宿のロビーにはもうたくさんの旅人たちが出てきていて、アレンさんもいる。私たちは目配せしあって宿から出た。
町を囲む壁の上でこうこうと燃え盛っている【篝火】の色は黄色に近い橙色。魔物が町を襲おうとしているという合図だ。
私たちの泊まっていた宿はクィドの町の南東門に近い。他の冒険者たちもそっちに向かっているので、人の流れのまま私とアレンさんも南東門へ向かった。
「やっぱり春は魔物が出るね」
「レジューム地方ですしネェ」
「関係あるの?」
「とりあえず急ぎまショウ」
アレンさんが小走りに変わったので、私も遅れないようについていく。
南東門では、すでに町の冒険者や旅の冒険者が口々に詠唱魔法で迫ってくる魔物を撃退しているところだった。
誰かが【爆炎】で魔物をなぎ払ったところに、【茨剣】をたずさえた剣士の人や【斥力】をまとった闘士の人たちが広がっていく。
後ろから魔法士の人たちが【火球】や【氷塊】で援護して、詠唱を唱える声が途切れない。
その詠唱ひとつひとつが魔法に変わっていく様子を見るのはずしりと心にくるものがあるけど、この鐘が鳴っている間は戦える人全員で力を合わせるのが約束だ。
私はニーグィ地方に入ってからよく使うようになった、私の1000分の1の魔力を消費するほうの「火打石」を手に取った。アレンさんが私に一番最初に作ってくれたやつだ。
「よし、やろうアレンさん」
「もちろんですゥ」
ずっとコンビを組んでいて、使っている途中にアレンさんの魔術道具が壊れたことなんてまったくと言っていいほどない。
それでもアレンさんは、こういうときほとんど後ろに引っ込んでいないで一緒についてきてくれる。
それが心強いから、私は頑張れるのだ。
「えい!」
私は「火打石」をこする。普通の【火球】の3倍の大きさの火の玉が飛んでいって、魔物を灰に変えた。
それでも倒せたのは一体。まだまだ魔物は大勢迫ってくる。
――負けない!
私は「火打石」を握り直す。日が昇りかけて全員が魔力切れでへとへとになるまで、私たちは魔物を倒し続けた。
……私だけピンピンしてたのは、活躍してないからじゃなくて、元の魔力量がおかしいくらい大きいからだ。なんだか微妙な気分……。
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