068 面白名コンビで賞!
ウォーレン歴9年 陽春の月14日 夕方
私たちが「感電餌」でウォーターバグを続々と減らしていると、また【拡声】の実況が入って「映像球」がゆっくり下降を始めた。
『森の中の魔物の魔力反応が規定値以下になりました! コンテストはここで終了となります、みなさん本部まで安全にお戻りくださいね~』
アレンさんが「映像球」を受け止めて、私は「感電餌」の壺をアレンさんに返す。アレンさんは壺を木箱にしまって木箱をしょいなおした。
「さてェ、結果を待ちまショウ」
「まずは戻るところからだよね」
私たちは魔物に襲われないように気をつけながら、森の中から本部のある草原のほうへ戻る。
長机の並ぶ本部に着くと、私はアレンさんから「映像球」を受け取って係の人に返す。一応71番コンビのリーダーは私ということになっているのだ。書類上。
他のパーティも続々と帰ってきていた。みんなが「映像球」を返却して草原にたたずんでいると、しばらくして【拡声】の声が響き渡った。
『お待たせいたしました! すべての集計結果が出そろいましたので、結果発表となります!』
わっと拍手が起こる。私とアレンさんも思わず手を叩いていた。
『最初にチャンピオンを発表してしまいましょう! 驚きの1047匹討伐を成し遂げたのは、55番のパーティです!』
よっしゃー、と歓声を上げたパーティのほうを見ると、いかにも強そうな剣士の人と、魔力量がけっこう多い魔法士の人2人が飛び上がって喜んでいた。これは……さすが、かも。
2位と3位も発表されたけど、私とアレンさんは全然ひっかかりもしなかった。
「やっぱり、上には上がいるね」
「魔術道具は詠唱よりほんのちょっとだけ発動に時差がありますからネェ、仕方ないですヨォ」
上位3パーティはたくさんの賞金がもらえるけど、後のパーティは残った額を山分けなので、実はそれほどもらえないらしい。
ちょっとけっこうかなり頑張ったからそれはなんだか残念だけど、まあいい経験になったと思えばそれでいっか。
そんなことを事後説明を受けながら考えていたら、突然【拡声】の声が大きくなった。
『しかぁし! 今回は運営委員会から特別賞をひとつ設ける運びとなりました!』
「特別賞?」
「なんでしょうネェ?」
周りの人たちもざわざわしている。ひととおりざわめきが収まってみんながまた正面を向いたあたりで、今回大声を張り上げているお兄さんがすう、と息を吸った。
『その名も、ずばり「面白名コンビで賞」! 奇妙奇天烈な魔法で、しかし確実に魔物を倒していった71番のコンビに250ユールを進呈します!』
「……えっ!?」
面白名コンビで賞、と書かれた急ごしらえっぽい看板をお兄さんが手に取る。手招きされて、ようやく私は状況をつかんで変な声を上げてしまった。
『ささ、71番のお嬢さん』
「エスター、行きまショウ」
「え、あ、えっと」
おろおろする私の服のそでをアレンさんがくいくい引っ張る。上位3パーティの人たちと同じように看板を受け取ってみんなの前でお辞儀をすると、わあっと拍手が巻き起こった。
私は隣で楽しそうにゆらゆらしているアレンさんをそっと見上げる。やっぱりこの賞がもらえたのは、アレンさんが作る魔術道具があったからこそ、だよね。
……あれ?
今、なにか重要そうなことが一瞬頭をよぎった気がするけど……なんだっけ?
エスター財布:357ユール36セッタ
エスター口座:14,881ユール00セッタ
→15,006ユール00セッタ
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