066 魔物撃退コンテスト
ウォーレン歴9年 陽春の月14日 朝
今日はいよいよ、ロジの町の魔物撃退コンテストの開催日だ。
町の食堂は参加者らしい冒険者の人たちでごったがえしている。元気を出そうとしているのか、大盛りの注文の声が飛んでいたりもした。
「いよいよだね、アレンさん」
「いよいよですネェ」
私たちはわくわくしつつも、なんだかんだ普通に朝食を食べる。特訓もしっかりしたし、アレンさんが新しい道具も作ってくれたし、作戦も練ったし、あとは開始を待つだけだ。
食堂を出ると、もう立て看板を持ったギルドの職員さんが立っている。「魔物撃退コンテスト会場はこちら!」
私はアレンさんと思わず顔を見合わせて微笑み合った。その看板の指す方向へ歩いていくと、町の外に出た平原に、ずらりと長机が並んでいる。
長机のところには大勢の職員さんが座っていて、ひとりひとりが「映像球」を机の上に置いている。
私はウエストポーチから今回の参加券を取り出した。このコンテストでは「映像球」で魔物の撃退数を記録するらしく、あらかじめ割り振られた番号の「映像球」を受け取ることになっている。
しっかり魔術道具が用意されているあたり、本当に歴史のあるコンテストなんだなあって感じがする。
「えっと、71番は」
「あのへんですかネェ」
アレンさんが指したあたりで71の札を掲げている職員さんに参加券を見せて、「映像球」の記録する方の小さい球を受け取る。他の人たちも続々と「映像球」の準備を済ませていった。
『さあ、お集まりいただいた皆さん、この度は魔物撃退コンテストに参加していただきまことにありがとうございます』
【拡声】の魔法でぐわんぐわんと響く声が平原に流れると、ぴりっと空気が引き締まった。
『「映像球」の準備はよろしいでしょうか? それでは私の合図から計測を始めます。いきますよ、3、2、1、始め!』
集まっていた冒険者の人たちが一斉に森めがけて散らばっていく。私とアレンさんも負けじと平原に気を配りながら早足で進み始めた。
大きな【拡声】の声で刺激されたのか、森に行くまでの平原でも魔物が飛び出してくる。
「
「
それぞれ詠唱魔法や魔法剣で魔物たちを倒していく参加者に紛れて、私も「火打石」で魔物を倒していく。
でもなんかこう、詠唱魔法と違って動作のぶんだけ後れをとっている気がしなくもない。……ええい、余計なことは考えない! 集中!
『皆さん得意魔法で次々と魔物を倒していく! 集計は職員が責任を持って行っておりますのでご安心くださいね』
だいぶ進んだのに、まだ【拡声】が聞こえてくる。このコンテストは町のほかの人の娯楽でもあるみたいだ。
『71番のコンビが使ってる魔法、なんだか見慣れませんね、面白い!』
実況の人に早速珍しがられてしまって、私とアレンさんは苦笑するしかない。まあ、魔術道具をこんなふうに使うのが珍しいのは、今に始まったことじゃないんだけど。
時々「火打石」と「投種器」を入れ替えて使ったりしながら、私とアレンさんは地図で確認した沼地のあたりへどんどん進んでいく。
今回の作戦に使う魔術道具は、沼地のあたりに出る水属性の魔物に効くようにアレンさんが作ってくれたのだ。
新しい魔術道具を使うのは緊張もするけど、楽しみでもある。気合いを入れ直そう。頑張るぞ!
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