「心も体も暖かく」

徒歩10分ほどで、家につく。その間はすごく短いように感じた。正式に付き合えたことの嬉しさと、少しの緊張、そして自分の憧れの人に認められ、そしてセクシャルが同じという。こんなに幸せでいいのかと思うほどに嬉しく。繋いだ手から幸せを共有した____


結局家につくまで何も話すことなく、お互いに今の高揚感を堪能した。

玄関を開け、同時に美香が口を開いた。

「おかえり」

琴美は、少しポカンとした表情で「何?」みたいな顔をしたあと、思い出したかのように

「ただいまぁ」

勢い良く美香に飛びつく、美香は仕事で疲れており、更に美香を探すために走り回ったのもあり、琴美を受けきれず、廊下に押し倒された…

バタン、と玄関が閉まる音がした。もう完全にふたりきりになったのだ。それと同時に二人は…

「美香さん…」

「もう彼女なんだから美香って呼び捨てにしてもいいんだよ?」

そう言うと彼女は首を横に振った。

「美香さんは美香さんなので、その…呼び捨ては…け、結婚してから…で。」

そんな事言われて理性を保てるわけ無いじゃん…

そのまま唇を奪い、そして彼女のボタンに手を伸ばすと…

「ここだと寒いので、あとシャワー浴びたいです…冷えました…」

ここまでその気にさせといてお預けなんて…って思ったが、美香も走ったので汗をかいて気持ちが悪いため「わかった…」と寂しそうに言った。

「あの…恋人になったので…」

お風呂を沸かすために給湯機のスイッチを押しに行くと、後ろからもじもじと琴美が、そんなことを言ってきたので、美香は変なスイッチが入ってしまった。

「え、なんて?」

「だから!恋人に…なったの…」

聞こえないふりをして、顔を近づけると…

「ちょっ…近い…」

「だって聞こえないから」

瞬く間に琴美の顔が赤くなっていく…もじもじと口をパクパクしながらかなりの時間がたった。そして、給湯機から音が鳴る。

「じゃあ、先は入りな」

そう声をかけると、肩をポコポコと殴ってくる。そしてそのまま美香の袖を持ちお風呂へと引っぱっていく。やはり、言葉で思いを伝えるのは難しいけど、行動力は人一倍なんだなと感じる美香なのであった。

「どうしたの?」

それでも意地悪を続ける美香に、無視を決め込み無言でお風呂へ連れていく。

「さすがにフル無視は心にくるかなぁ」

琴美は無言で振り向き、睨まれる。

相当傷ついたんだ…でも、そんな顔されたらもっといじめたくなっちゃうじゃないの…

結局、脱衣所まで無言で連れてこられ、さらに琴美は美香の服まで脱がしかかり、服に手を伸ばしたところで、琴美の顔を両手で包むように持ち上げ…

「ねぇ、聞いてる?」

そのまま、何か言いたげにパクパクしている口に吸い込まれるかのように軽く口づけをし、何が起きたかわからないと、目をキョロキョロしている琴美を、今度は美香が脱がす…朝も見たが、やはり綺麗だ。身長は美香より顔一個分ほど違う小さな体なのだが出るとこは出て引っ込んでるとこは引っ込んでるという、とても良い体型をしている。

すべて脱がし終わった後、今までかかっていた靄を吹き飛ばすように顔をぶるぶると振り、無言でもう一度、美香の服に手を伸ばそうとするが、美香は手首を掴み、進行を止めた。

「な、なんでですか⁉」

「やっとしゃべた…」

「ごめんね」と謝り、琴美を抱き寄せる。そして耳元で「…一緒に入ろ」とつぶやく。琴美は抱き着いていた体を少し離す。美香は少し悲しそうな顔をしたが、琴美が自分の服に手を伸ばしているところを見て安堵し、されるがまま服を脱がされた。

「や、やっぱり美香さんの裸は、その、キレイです。」

そう少し頬を赤らめ、呟いた。「そんなことないよ」とごまかしたが、とても顔が赤くなるのを感じ、顔を見せないようにお風呂に足を進める。

お互いにシャワーを掛け合い、先に美香が湯船に浸かる。

琴美はどう入ればいいのか様子をうかがっていたようなので、自分の目の前に来るように水面をパシャパシャと叩くと、琴美は美香の足と足の間に入ってきた。美香は後ろから手をまわし抱きしめる。

「ちょ、待ってください…」

「何でよ…」

少し落ち込み口を尖らせる。

「あ、当たているので…ど、ドキドキします。」

美香は琴美の胸に手を当て「…ほんとだ」とつぶやいた。そのとき、琴美が振り返りぽかぽかと、パンチしてくる。その顔はとても赤く、とてつもなくかわいく見えて、思わず頭をなでてしまった。

「美香さんは…いつもずるいです…」

口を尖らせそんなことを言ってくるもんだから、とても照れるのだけど…

そのまま、口づけを交わし快楽へと落ちていった____


時を忘れ、お互いの体を堪能した。そしてのぼせた…

お風呂から上がり、美香は裸のまま冷蔵庫に向かう。その後ろに琴美も付いてきて「クラクラしゅるぅ…」と完全にのぼせきっていた。そんな琴美に、冷蔵庫からアイスを取り出し、渡す。「ありがと…」覇気のない琴美は美香からアイスを受け取り、一口かぶりつく。

「はぁ…生き返る…」

そんなことを言っている琴美に、「じじぃか。」と心の中でツッコミながら、自分のアイスを手に取り、ソファに座る。隣をトントンと叩き琴美を呼ぶ、その音に気付き、琴美が小走りでこちらへやってきた。もちろん服は着ていない。そのため程よく引き締まった体に立派なものをお揺らしになって…

「えろい…」

「な、なに言ってるんですか!」

照れながらも、隣に座ってくるあたり、からかいたくなる原因なのだと悟った。

だんだん頭のクラクラも収まってきて、肌寒くなって来たところだが、一つ話しておかなければならない。そして、美香は口を開いた。

「ねぇ、今日はさ。寂しい思いをさせちゃったね…」

琴美はそんなことないと首を横に振る。

「でもね、私気づいたの。これからはお互い恋人として、接していくうえで何か約束を設けようって」

「わ、私もそれには賛成ですが、あまりに束縛されるのは…」

「大丈夫、そんな厳しいものじゃないから。でも、もしかして浮気しないってのもだめ?」

にやりといじわるそうに美香は言った。

「それは、束縛には入りません!」

頬を大きく膨らませ怒ってくるので、ごめんごめんと頭を撫でてなだめる。

「浮気なんてしないし、こんなに可愛い彼女ちゃんが居たら他の人なんて好きになれないよ。」

頬を赤らめながら頭を撫でていた手をどけると

「あ、当り前じゃないですか…こんなにか、かわいいのに…」

「自分で言ってて恥ずかしくないの?」

「ものすごく恥ずかしいです…」

小さく縮こまる琴美は服を着ていないのもあり、とても小動物に似ていた。

さすがに寒くなってきたので、服を着ることにした二人は、寝室のクローゼットに行き、寝間着ねまきに着替え、リビングに戻る。

「えーでは。これから僕たちの生活について、『ルール』を設けようと思う。」

「イェーイ」

「では、琴美君。何かいい意見はあるかね?」

え、そんなこと急に言われてもわからないんだけど…でもとりあえず言わないとだよね…

「えっと…門限とか?」

「門限?いいの決めちゃっても」

「だって、美香さんが心配するかなって。き、今日みたいなことがあったら…」

「えへへ、私って愛されてるのね」

「……」

「まあ、きっちりとは門限は決めないわ、でも。」

「でも?」

「私が寝るまでには帰ってくること。わかった?」

「何でですか?」

だって、一緒に寝たいなんて言えるわけないじゃん…年上だし、リードしなきゃだし、でも少し甘えたい。なんでだろ男の人と付き合ったときはこんなことなかったのに。琴美ちゃんには何かそうさせるものがあるみたい。

「もしかして、私と一緒に寝たいんですか?」

「え…そ、そんなことないじゃない別に…し、心配なだけよ」

僕がからかわれてしまった―――


そんなこんなでイチャイチャしながらも門限は美香さんが寝るまで、食器は基本別家事は分担制ということが決定した。

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