「新たな日常の幸せ」
なんなんだよ、あのハゲたかが一回遅刻しただけで、あんなにキレやがって…お前だっていろんな女と寝て遅刻しまくってんだろ‼
そんなことを思いながら、仕事を終え、帰路をたどっていた、
「はぁ…今日もコンビニの弁当でいいか…」
琴美ちゃんもコンビニのお弁当でもいいかな?まぁ大丈夫だろ
そんなことを考えながら、コンビニの中に入っていく…
「いらしゃせー」
時刻は9時を少し過ぎたあたりだが、店員はとても明るい、こんな夜には明るすぎるほどに…
店内を進み、お弁当が並んだ冷蔵棚を見る…
「僕は、チキン南蛮弁当で…琴美ちゃんは何がいいだろ…」
こういうときに、連絡ツールがあると便利なんがけどな…
「とりあえず、僕が食べたいって思ったやつを買っていけばいいか…」
もし口に合わなければ、僕が食えばいいし…
そう思いながら「ヒレカツ弁当」をかごに入れ、適当な炭酸飲料を手に取りレジへ向かう______
遅いな…
この家に転がり込んでから二日目、初めての留守番…厳密には昨日も玄関で帰りを待っていたので、初めてはないのだが、あのときとは立場が違う。合法的に好きな女の人の家で一日留守番となったら…とてつもなく緊張する。
部屋の中に充満する美香さんの匂い…昨晩のことを思い出し、少し頬を赤らめながらキッチンに向かった。
昼飯は勝手に何でも食っていいと言われているものの、何を食べていいのかわからない。
「これは…!」
琴美が見つけたのは、一つのお菓子「キャベツ次郎」だった。
このお菓子は、ふ菓子状のものに、オイスターソースのようなものがかかり、その上から青のりがふりかけてあるものでとても美味しい。ただ手が油と青のりで汚れてしまうのが欠点である。
「これは美味しい…特につまんだあとの指を舐めるのが癖になる…」
テレビを見ながらのんびり食べていくと、すぐに無くなってしまった…
時刻は12時を過ぎているが、お菓子を食べていたせいで、そこまでお腹は空いていない。でも、お昼を食べていなければなにか心配されるかもしれない。そう思った琴美はキッチンに向かい、なにかお昼になるものがないかと探していると、あることに気付いたのだ。
「なんか、冷凍食品や乾麺みたいな時間や手間がいらないものばかりだ…こんなので美香さんの栄養足りてるのかな…」
そう思いながら、比較的少なめのドリアの冷凍食品をレンジに入れ、パケージに書いてある時間をレンジに設定し温める。レンジの使い方は朝、美香さんに教えてもらったので、冷凍食品を作るぐらいは、簡単にできる。
「美味しいけど…なんか寂しい…」
初めての留守番でってのもあるが、好きな人と一緒にいられないのは、辛いものがある。
「…そういえば」
私達、付き合ってないんだということに今更気づく、確かに昨日は一緒に寝たし、は、裸っだったし。少し頬を赤らめ、そんなことを考えてしまう。そもそも、美香さんは
「あのときは、酔っていたみたいだし…」
あ、私浮かれてたのか。憧れの美香さんと一緒に暮らせて、一夜を全裸で過ごしたからって。
そこまで行ったらもう両思いじゃないのかと思うが、『酔っていたから』ということだけで片付いてしまうため、今の琴美は考えつかなかった_______
「ただい…」
時刻は10時を過ぎるか過ぎないかほどで、外は真っ暗。部屋の中も照明をつけなければ当たり前のように暗い。そして中に人がいれば当然、明かりは点いているはずだ。なのにここには明かりはなかった…先に寝てしまったのかと思い少し申し訳無さを感じながら部屋に入るが寝室にはいない、トイレにもいない、リビング…いない。
次の瞬間には家を飛び出していた。
なにか事件に巻き込まれたかもしれない。と考えがネガティブな方にどんどんと進んでいく。そして何が悪かった、出会ってまだ2日も経っていない今までを振り返り今までにない思考速度で考え、それでも答えは見当たらない。
っと
「み、見つけた…」
河川敷にポッツンと置いてあるベンチに俯向きながら座る少女に声をかけた。
「たくぅ心配したんだよ?早く帰ろ。」
そう手をのばすと…彼女は首を横に振った。
美香はそれを見て、やはり僕がなにかしてしまったのかと、落ちる心を無理やり上げ、琴美の隣に腰を落とす。
「僕なにかしちゃった?そしたらあやま…」
そう言いかけたのを琴美が遮るように口を開いた。
「私、浮かれてました。美香さんと同じ部屋で暮らして、同じベットで寝て。でも気付いたんです。私は
琴美は、大粒の涙を流した。そして、美香も釣られてないた。いや、今まで大変な思いをしていたのに、自分はなんて無責任なんだと思ってしまったのかもしれない。
そんな気持ちを抑えるように今までの自分の行いに憤りを感じながらそれでいて、とても優しいぬくもりで、包み込んだ。
「多分、琴美ちゃんは勘違いしてるというか…誤解してるよ。」
泣きじゃくっていた顔で「え…?」っと驚きを見せた。
その顔に見とれてしまい、理性なんて保てるわけもなく、小さく震えていた唇を宥めるように優しく口付けをした。
「僕ね、
いきなり唇を奪われ、何が起きているのかわからなくなり目が泳いでいる琴美は、その言葉を聞き、もう一度美香を見上げた。
「っていうか、いまのでわかっちゃたね…」
苦笑を浮かべる美香に、琴美はなにか言いたげそうに口をパクパクさせていた。そんな彼女を尻目に美香はベンチから腰を上げ琴美の前で
「ひと目見たときから、貴方のことが…好きです。一生をかけて何があろうと守り抜いてみせます!なので、ぼく、いや私と付き合ってください!」
とても古典的なあたかも用意してあったかのようなセリフだが今の琴美には、十分すぎるほどに嬉しいものだった。
そして彼女は手を握り交際を承諾した。そのまま帰路につく。
今日は、何にも刺さってなかった花瓶に2つの大きな百合の花が生けられた、そんなありふれた日なのだが、きっと誰かに取っては人生最大に幸せだったに違いない。
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