題24話 残酷な終焉
パミュは毎週増えていくカラフルな御守りの数に気付き始める。
いつものように三人でランチを食べている時に、パミュは話しを切り出した。
「琴音、あんた御守りの数、めっちゃ増えとらん?」
「そおっ?」
「何個あると?」
「数えたことないけど」
パミュは自分で数え始める。
「一、二、三、四、五、六、七、八」
「八個もあるやん! いったい、なんば、そんなに頼んどると?」
「いやー、別に」
「神さんもそれだけ頼まれたら、肩身が狭いやろ?」
「それ、大袈裟やない?」
「これは『藁をも掴む思い』に見られてもしょうがなかよ」
「そんなあっ!」
「なんの神頼み?」
「ちょっと言いにくいけど」
「誰にも言わんけん、耳元でそっと呟いてみてん?」
耳を琴音の口元に近づける。
「それって、小声で言っても、普通に話しても同じことやないん?」
パミュの肩を平手で叩いた。
「そっと言うと、なんか重要な隠し事のごつ感じるやろ?」
「絶対、誰にも言ったらいけんよ!」
琴音は釘を刺す。
「ぜったい言わんけん」
パミュは口の前で指をクロスさせる。
「あのね、実は天神の警固神社で先輩のプリンスが週末バイトしてるの」
恥ずかしそうに話した。
「それで?」
意味がわからないのか、パミュからなんの反応も示さない。
琴音は思っていた反応とは違うので、もう一度、違う角度から説明する。
「先輩に会えるチャンスを毎週末作ろうと、警固神社に通ってるっちゃ。
先輩が御守りを売っている社所で働いてるから」
琴音は続けるが、パミュは全く期待している反応を起こさない。
「それで、先輩と話すには、御守りを買うしかないやろっ」
パミュは理解し始めたようで、ビックリした顔を琴音に向けた。
「八個ぶら下がっとるってことは、八週間も通い続けとると?」
「そう、二ヶ月前から」
切なそうな顔をする。
「なんで、そげんプリンスに会いたかとね?」
またぶっきらぼうな質問が飛んできた。
「お前、馬鹿か?」
と言いたくなったがこらえた。
「女心をくんでくれ!」
と言わんばかりに、自分の思いを伝えた。
「ここまで言ってもわからん?」
パミュは少しの間考えていた。
「わからん」
「それは、先輩が好きなのに決まっとうやろ!」
勘忍袋の尾が切れた。
パミュは何か聞き間違えたというように聞き直す。
「今なんて言った?」
琴音はゆっくりと言い直す。
「せ・ん・ぱ・いが好き!」
聞いた言葉が信じられないというように、パミュの口が塞がらない。
「あんた、あんまり頭良くなかと思っとったばってん、そこまで馬鹿やとは知ら
んかった」
大きくため息をついた。
何を言っているのか理解できない琴音の顔を見ながら、パミュはゆっくりと説明し始める。
「本当にファッションの世界知らんとたいね。あそこにおらす先輩見てみ」
近くに歩いている男子生徒を指さす。
「あれ、イケメン? それともブ男?」
琴音はパミュがなぜ、今までの話題とは関係ない質問をし始めたのか理解出来なかったが、とにかく質問に答えた。
「めっちゃイケメン」
「あれはホモ」
パミュは百八十度振り返って、他の男を指差す。
「じゃあ、あの先輩は?」
「あれも、めっちゃイケメン」
「そうでしょ。あれもホモ」
「やっと、馬鹿もわかり始めたな」
と言うように琴音を見た後で、質問を続ける。
「じゃあ、あの先輩は?」
「どう見てもイケメンとは言えんね」
「あれはヘテロ」
「私が言いたいことがわかっただろう」
と琴音を見るが、次の質問をおとなしく待っている。
パミュは吐息をついた。
「馬鹿につける薬はない!」
と言うように最後の質問をした。
「じゃあ、プリンス先輩は?」
「もちろん、超イケメン」
と答えた後で、やっとライトが頭の中に点滅した琴音は、大きく目を見開いた。
「えっ、まさか」
パミュを見つめる。
パミュは眉間にしわをよせて、
「当たり」
と言うように首を縦に振る。
「ホモに恋してもしょうがなかろうが……」
呆然と立ち尽くす琴音の肩を抱きしめて、背中を手の平で何度も摩った。
二ヶ月続いた琴音の恋は突然終わった。
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